健康か権利か…コロナ療養者の投票どうする? 参院長野補選と広島再選挙の大きな課題

2021年4月10日 06時00分
 菅政権で初の国政選挙となる参院長野選挙区の補欠選挙と広島選挙区の再選挙が始まった。コロナ禍の真っただ中で選挙事務を担う自治体は、投票を望む自宅・宿泊施設の療養者の機会確保と感染防止の両立という難題に直面している。政府に現場の「悲鳴」を受け止める姿勢は乏しく、憲法で保障された選挙権が侵されかねない状況も生じ始めている。 (川田篤志)

◆外出禁止ではないが…

 長野県選挙管理委員会の担当者は現状を「武器を持たないまま戦う感じだ」と表現する。コロナ禍ではない平時を前提とする公選法の規定に沿えば、療養者も等しく投票できるよう取り組む必要があるからだ。
 2月施行の改正感染症法はコロナ患者に対し、外出自粛要請に応じる努力義務を課した。ホテルなどに入った療養者は、10日程度は外出できず、その間に投票日を迎えれば1票を投じる機会を失う。長野県内の療養者は9日時点で宿泊80人、自宅42人、広島県内は8日時点で宿泊51人、自宅6人。
 政府は「公選法上、投票のための外出を禁止していない」と原則論を繰り返すが、投票時だけ療養者に外出を促すわけにもいかず、長野県の担当者は「できる範囲でやるしかない」と話す。補選では療養者に引き続き外出自粛を呼び掛け、なお希望する人には投票所がすいている時間帯を伝える方針だ。選挙権行使の制約にもつながりかねない異例の対応だが「職員が感染し、選挙中に全員休めば致命的だ」と理解を求める。

◆自治体でも対応分かれる

 国内初の感染者が確認された昨年1月以降、総務省は選挙でマスク着用や手洗いなどの一般的な対策を助言してきた。療養者の対応は先月、ようやく長野、広島両県と、13日に衆院北海道2区補選が告示される北海道に「宿泊施設に期日前投票所や不在者投票記載場所を設けた場合、当該施設で投票が可能」と通知。各都道府県に同様の内容を伝えた。今月7日付の通知では、期日前投票所を運用する留意事項を列挙した。
 だが、自治体側からは「現実的ではない」と不満が漏れる。都道府県が設ける宿泊施設には各地から療養者が集まるが、期日前投票は施設が所在する市区町村に住む有権者にしか認められないためだ。事務負担の重さや職員の感染リスクの懸念も強く、広島県は療養者向けのホテルに投票所を設置した一方、長野県と北海道は見合わせるなど対応が分かれた。
 自宅療養者はどうするのかという問題も残る。先月に知事選があった千葉県選管の担当者は「宿泊施設だけ便宜を図って自宅療養者に文句を言われたら、返す言葉もない」と漏らすが、総務省は「投票所に個別に連れて行くなど、運用上の工夫は考えられるのでは」(森源二選挙部長)と具体策は自治体任せだ。

◆郵便投票も難しく

 秋までに衆院選が行われ、各地では東京都議選など地方選も相次ぐ。感染拡大で自宅・宿泊療養者が増え続ければ、選挙権が脅かされる恐れは強まる。
 札幌市と北海道は先月、重度障害者らに限定されている郵便投票をコロナ患者に認めるよう政府に要望した。加藤勝信官房長官は7日の記者会見で、郵便投票の不正防止の困難さを念頭に「選挙の公正確保などの観点も含め、検討が必要な課題」と話すにとどめた。

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