服重く「自分もダメだ」と…板橋区の水難事故、助けに入り救助された男性 専門家「溺れたら浮いて待って」

2021年4月11日 06時00分

行方不明の男性を捜索する捜査員ら=9日、東京都板橋区で

 東京都板橋区の新河岸川で小学2年の男児(7)が溺れて亡くなり、助けに入った男性が行方不明になった事故で、2人を助けようと川に飛び込み自身も溺れて救助された別の男性(58)が、本紙の取材に「水で服が重くなり、自分もダメだと思った」と当時の状況を語った。水難者を目撃した場合、とっさに飛び込みがちだが、専門家は「慌てて行動せず、『浮いて待て』がポイントだ」と助言する。(天田優里)
 警視庁などによると、男児は7日午後4時半ごろ、川岸の公園で兄らと遊んでいた際、川に流された友人のサンダルを拾おうとして転落。近くにいて助けに入った30代ぐらいの男性とともに流された。
 現場は高さ約2.5~3メートルのコンクリート製の堤防があり、川岸は草むらになっているものの、ほぼ垂直に護岸が落ち込んでいる。管理する都などによると、川岸から深くなっており、事故当時の付近の水深は約2~2.5メートルだった。

◆下に引っ張られるように体が沈んでいった

 取材に応じた男性は妻と堤防沿いを散歩していたところ、川の方から「助けて」という子どもの声を聞いた。堤防の下を見ると男児ら2人が溺れていて、堤防に設置された足掛けを使い、急いで岸に下りた。
 男児は岸から約2メートル先、30代ぐらいの男性はさらに川の中央付近で沈んでいくのが見えた。泳ぎに自信があり、川も一見流れがなく浅いように思えたため「これなら助けられる」と服を着たまま飛び込んだ。
 しかし流れは予想以上に速く、数十秒で着ていたジーンズが水を吸って重くなった。身動きが取れなくなり護岸に取りつこうとしたが、下に引っ張られるように体が沈んでいった。
 「これにつかまって!」。妻が2メートルほどの木の枝を拾って突き出し、しがみついて救助を待った。数分後、若い男性2人に引き上げられた。男性は腕や腹の軽いけがで済み「服を着て川に入ったらだめだと思った。助けが来てくれなかったら、自分も死んでいた」と振り返った。

現場の近くに手向けられた花束や菓子など=東京都板橋区で

◆溺れたらあおむけに「背浮き」を 救助は陸から

服や靴を身に着けたまま浮かぶ「背浮き」を体験する子どもたち=水難学会提供

 川や海で水難事故に遭遇したら、どうしたらよいのか。一般社団法人水難学会の斎藤秀俊会長や日赤によると、溺れた人は着衣のままあおむけに浮かんで救助を待つ「背浮き」、救助活動は「陸から道具を使って助ける」が鉄則という。
 背浮きは、着衣のまま息を吐かずにあおむけになり、衣服や靴が含んでいる空気で浮力を得ながら、口と鼻を水面に出すようにする。板橋区の事故で助かった男性は「手をバタバタさせているうちにどんどん沈んだ」と証言したが、斎藤さんは「ジタバタしなければ必ず浮いてくる」と話す。
 背浮きができたら、なるべく体を動かさずに救助を待つ。新型コロナ禍で多くの人が着けているマスクは、ぬれると呼吸ができなくなるため、すぐに外す。背浮きは小中学校などでも講習が行われている。
 水難事故を目撃した場合、救助活動は陸上で自身の安全を確保した上で、複数人で臨むのが前提になる。溺れた人には背浮きを指示し、119番した後も「浮いて待て」と声を掛け続ける。ボールや浮輪、空のペットボトルなどを投げ入れて抱えさせたり、長い棒や、長袖の服を脱いで差し伸べてつかませるのも有効だという。釣りざおがあれば、空のペットボトルに重りを付けた釣り糸の先を入れてふたを閉め、投げ込む方法もある。

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