<11日に考えた>電気に頼らず暮らす 那須の非電化工房代表・藤村靖之さん

2021年4月11日 15時41分

ソーラーフードドライヤーでオレンジの皮を乾かす藤村さん=那須町で

 東京電力福島第一原発事故の教訓で、電気に頼らない生活に関心が高まった。那須町の「非電化工房」は自然エネルギーを活用した暮らしを実践している。事故から十年が経過した今、代表の藤村靖之さん(76)は「地球環境は追い詰められているのに、電気は使い放題。過剰な消費を改めなくては」と警鐘を鳴らす。(原田拓哉)
 太陽光を利用したソーラーフードドライヤーや炭焼き窯…。さまざまなアイデアを生み出す藤村さんは、電気を使わない「自立型・持続型」社会実現のため、アフリカや南米の途上国を支援している。「先進国の象徴に電化製品があるのでは」と疑問を抱き、大手建設機械メーカーで開発を担当した経験から、放射冷却などを利用した非電化の冷蔵庫、洗濯機を開発し、技術を伝える。
 那須町に「非電化工房」の施設を建設したのは二〇〇七年。「エネルギーとお金を使わないで得られる豊かさ」を提案する拠点を目指した。一万六千平方メートルの広大な敷地で、屋根に杉皮や麦わらを敷き詰めた断熱効果があるカフェも運営する。美容師、元教諭、高校を卒業したばかりの若い世代の人たちが工房を訪れ、一年間、住み込みで農業、建築など「生きる力」を学び、巣立っていく。
 大学院で物理学を専攻した藤村さんは原子力の専門家でもある。一九八六年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後は何度も現地に足を運び、現地の政府の対応に不信感を持った。福島第一原発事故でも同様では…と、事故後の二〇一一年三月に工房の活動を一時休止。放射能から子どもたちを守るため奔走した。
 福島県に隣接する那須町は、放射線量が高かった。「国や電力会社は子どもを守ってくれない。大人が守らなくては」と、NPO法人「那須希望の砦(とりで)」を発足し、町と協力して放射線量の測定、除染作業を徹底した。被ばくから守るため、子どもたちの行動調査や、野菜や穀物の汚染測定をした。母親たち、生産者とは衝突を繰り返した。「すぐに結果が出ないが、十年たち、子どもたちを守ったという自負はある」と振り返る。
 今、藤村さんは「地球の冷やし方」とのタイトルの本を執筆している。那須町の南斜面を掘った横穴式住宅は、一年中、二〇度程度の快適な暮らしができる。スクラップ前の廃車を逆立ちさせ、後ろのタイヤに羽根を取り付けると風力発電に−。こんなユニークな提案をするという。

関連キーワード

PR情報

栃木の新着

記事一覧