水木しげるさんを超す作家の育成を夢見て…魑魅魍魎が跋扈する妖怪グッズ専門店「大怪店」

2021年4月13日 06時30分

杉並区の高円寺で日本で唯一の妖怪専門店「大怪店」を営む高☆梵さん

 杉並区の高円寺にありとあらゆる妖怪グッズがそろう妖怪専門店「大怪店(だいかいてん)」がある。おどろおどろしいお面からかわいい雑貨まで国内の妖怪作家が作った作品がところ狭しと並ぶ店内は、まさに“魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する”空間だ。店主の妖怪DJ高(たか)☆梵(ぼん)さん(42)は「ここは妖怪たちのライブハウスです」と話す。
 一つ目小僧の箸置きにぬりかべの置物、かっぱのピンバッジ…。店内の棚にはかわいくて、少し不気味な妖怪たちがずらり。奥にあるギャラリーは月替わりで一つのテーマの作品を展示している。取材した日はお面がテーマの「大怪面(だいかいめん)」。精巧に作られた鬼やキツネの面は迫力満点で、三、四万円するものも売れるという。

店内のギャラリーに展示された人気のお面(魚眼レンズ使用)

 高☆梵さんいわく「妖怪だけを扱う専門店は日本で大怪店だけ」。常時二千点もの作品が並ぶが、飛ぶように売れるかといえばそうでもない。そこで作品を買い取らず、作家に棚を貸し出すシステムで店を運営。作品の新陳代謝と収入の安定につながるが、それは「妖怪人脈」があってこそ。元バンドマンで妖怪と音楽など異色のコラボでイベントを仕掛ける高☆梵さんは、四百人以上の妖怪作家とつながっている。
 幼いころから妖怪好き。大学時代は下宿先の隣の古書店で妖怪漫画の巨匠水木しげる作品を買い集め、音楽サークルでは妖怪にまつわる歌も作っていた。

初心者でも手に取りやすいというお皿や置物

 卒業後もバンドマンとして音楽の道を歩んだが、三十歳で人生にマンネリを感じ、ヒッチハイクに挑戦。目指したのは、水木さんの故郷・鳥取県境港市だ。
 東京を出発し、翌日の昼前には境港に到着。水木しげるロードにある妖怪の像を撮影し、その日の夜行バスで帰京した。想像より短い旅だったが「やれば何でもできる」という達成感に包まれた。
 帰京後、SNSで知り合った妖怪好きの人に、鳥取県が都内で開いた地域興しイベントに参加しないかと誘われた高☆梵さん。妖怪関連の音楽を流し、イベントを盛り上げた。「妖怪DJ」が誕生した。
 その後も独自に妖怪をテーマにした音楽イベントを開催。バンドマン時代は数人だった客は五十人以上に。妖怪と音楽のコラボに可能性を感じた。
 二〇一一年、音楽だけでなく、作家がその場で妖怪の絵を描き、グッズも販売するイベントを開催。これが大怪店の原型になった。イベントは定期開催し、自然と妖怪人脈が広がった。
 一六年、高☆梵さんは「やればできる」精神で派遣社員を辞め、夢だった「大怪店」を同区阿佐谷にオープン。発表場所に飢えていた作家らによって貸し棚は埋まり、店は軌道に乗った。一九年には高円寺に移転し、全国各地の妖怪好きが集まる店に成長した。

ご存じ、アマビエ

 高☆梵さんは「アーティストを育て、世に送り出す。やっていることはライブハウスと同じ」と作品に目を細める。次の夢はさらに壮大だ。「妖怪の姿に正解はないのに、妖怪の名前を聞けば多くの人が水木しげるさんの絵を思い浮かべる。そんな常識を壊してしまうくらい有名な作家と作品を育てたい」
 大怪店は杉並区高円寺南3の44の17。火、水曜日定休。平日は正午〜午後六時、土日祝日は同〜午後七時。問い合わせは電050(5309)2219。
 文・西川正志/写真・伊藤遼
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