<新型コロナ>入場者減で世界遺産ピンチ 富岡製糸場 20年度は6割減

2021年4月13日 07時56分

入場者数の減少が続く富岡製糸場=富岡市で

 世界遺産「富岡製糸場」(富岡市富岡)の入場者数は昨年度に十七万七千四百十九人となり、前年度から六割減少した。入場者数は世界遺産登録された二〇一四年度をピークに減少が続く。運営の柱となる入場料収入も落ち込み、施設の維持管理のため積み立てた基金も本年度で底を突く見通し。客足が回復しなければ、老朽化が進む施設の保存整備への遅れも懸念される。 (安永陽祐)
 製糸場は一四年六月、「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産に登録。同年度の入場者数は百三十三万七千七百二十人と一三年度から四倍以上に急増したが、一六年度は約八十万人、一九年度には約四十四万人まで減少した。
 年々減少の一途だったところに、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちを掛けた。昨年三月二十九日〜五月末は休業。同十一月の入場者数は三万七千人まで回復したが、感染が再拡大した同十二月以降は低迷し、当初見込んだ五十万人を大きく割り込んだ。
 県は昨年六月、情報発信施設「県立世界遺産センター」(同市富岡)を開業させた。同十月には保存整備工事をした国宝「西置繭所」が本格オープンし、入場者数の回復が期待された。市世界遺産観光部の森田昭芳部長は「感染が拡大する直前は増加の兆しがあったのに」と肩を落とす。
 運営の主な財源は入場料と国や県の補助金。市は昨年度当初予算では三億五千六百万円の入場料を見込んだが、今年三月の補正予算では一億一千五百万円に減額した。施設の保存整備工事を遅らせるなど歳出を切り詰めたが、市の一般財源から初めて一億一千五百万円を充てる事態となった。
 入場料収入などを積み立てた「富岡製糸場基金」も年々減少。ピーク時の一六年度末には十億円近くあったが、取り崩しが続き、昨年度末には七千万円まで減少。本年度も約七千万円を運営に充てる予定で、本年度末にはなくなる見通しだ。
 製糸場には繰糸所や西置繭所など国宝を含む約百棟の文化財があり、市は三十年計画で保存整備を進める。西置繭所の工事後、国宝「東置繭所」の保存整備工事に着手する予定だったが、本年度は見送った。
 本年度の入場者数は二十五万人を見込むが「採算ラインは五十万人」(森田部長)。コロナ禍以前の水準まで客足が戻らなければ、保存整備に遅れが出る恐れがある。森田部長は「コロナが収束し(財政的な)体力が付かないと厳しい。それまでは仮想現実(VR)の導入を検討するなど見せ方を工夫して入場者を増やしたい」と話している。

関連キーワード

PR情報

群馬の新着

記事一覧