福島第一原発の汚染処理水 政府が海洋放出の方針決定 漁業者「絶対反対」の声ある中、2023年にも放出開始

2021年4月13日 09時35分
 東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で発生が続く汚染水を浄化処理した後の水について、政府は13日朝の関係閣僚会議で、原発から福島沖へ海洋放出処分する方針を正式に決定した。今後は事故当事者の東電が、放出に反対する漁業者らの理解を得られるかが焦点。東電は柏崎刈羽原発(新潟県)でのテロ対策設備の不備など不祥事続きで信頼を失っており、重要な手続きを再び政府任せにしかねない。(小川慎一)

敷地内に処理水のタンクが並ぶ東京電力福島第一原発=2021年4月10日、本社ヘリ「おおづる」から撮影

 菅義偉首相は会議で「処分は廃炉を進めるのに避けては通れない課題だ。政府が前面に立って安全性を確保し、風評払拭ふっしょくにあらゆる政策を行っていく」と述べた。東電の小早川智明社長は会議後の取材に「方針に従い、主体性を持って適切に取り組む。風評被害で損害が発生すれば適切に賠償する」と話した。
 政府決定を受け、東電は放出設備の準備を始める。原子力規制委員会の許可などを含めて放出まで2年程度かかる見通し。処理水をためるタンクは2022年秋ごろに満杯となるため増設を検討し、放出は早ければ23年にも始まる。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は海洋放出に「絶対反対」の立場を貫いており、政府と東電の思惑通り進むかは不透明だ。

◆風評被害対策、政府「前面に立つ」も賠償は東電

 政府は基本方針で、放射性物質トリチウムを含む水の海洋放出は国内で実績があり、海の放射能汚染の状況を監視できる点を挙げた。大阪市の松井一郎市長が大阪湾からの放出に言及したことがあるが、放射性物質の敷地外への移動や保管は自治体との調整に時間がかかるため、福島第一原発で処分を実施すると明記した。
 懸念が強い風評被害には政府が「前面に立って取り組む」としながらも、賠償は東電の責任と強調。「被害者に寄り添って迅速に対応」するように指導するという表現にとどめた。
 処分方法は、トリチウムの濃度を海水で100倍以上薄め、福島第一原発で汚染されていない地下水を海に放出する際と同じ基準未満にするとした。東電は処理水の放出完了に、30年程度かかると見込んでいる。

福島第一原発の処理水 1~3号機では事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)への冷却水と、原子炉建屋内に流れ込んだ地下水や雨水が混ざり汚染水が大量に発生し、多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化してからタンクに保管。技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれ、約7割は浄化が不十分でトリチウム以外の放射性物質が国の排出基準を超えて残るため、東京電力は放出前に再浄化する。トリチウムの放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出。トリチウムの放射能は約12年で半減する。


おすすめ情報