漁業者「国も東電も信用できない」 6年前の約束はどこへ 福島第一原発の汚染処理水海洋放出

2021年4月13日 10時06分
 東京電力福島第一原発で発生が続く汚染水を浄化処理した後の水を福島沖へ海洋放出処分するという政府方針の正式決定に対し、福島県の漁業者から憤りの声が上がった。(片山夏子)

松川浦漁港で水揚げされたばかりの魚が次々と競りにかけられていく=福島県相馬市の相馬原釜地方卸売市場

 相馬市の松川浦漁港の男性漁師(69)は、東電が2015年に処理水の処分を巡り県漁連に「関係者へ丁寧に説明し、理解無しにはいかなる処分もしない」と約束したことに触れ、「(放出したら)約束違反だべ」と怒った。
 福島では3月に水揚げ量を制限する試験操業が終わり、本格的な操業に向けてようやく踏み出したばかり。別の男性漁師(52)は政府が海洋放出を決めるという報道後、魚の値段が2、3割下がったと嘆いて言った。「(影響があるのは)福島だけじゃない。茨城も宮城も一緒。何十年も流されたら、後継者がいるところは影響が大きい。説明も十分されていないし、流しても大丈夫だと言われても、国も東電も信用できない」

東京電力が福島県漁連の要望に回答した文書。「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わず」と記されている

 タコ漁をする男性(60)は、政府の決定があまりにも強引だと憤慨する。「こんなことないべ。国が決めたことだと押し切るのは、沖縄の基地問題と同じ。漁で食べられなくなったら、みんな自殺するしかない。ようやく事故から10年たったのに。流せば必ず(風評被害など)影響は出る。国は風評被害が出たら対策するって言うけど、できるならこの10年の間にやっている」。この地域は、若い後継者がたくさんいるという。「ここで何十年も流されたら…。やる気がなくなる。ここの漁は駄目になる。絶対に反対」と繰り返した。
 メバルを市場に持ってきた女性(46)は「流してほしくないと言ったって、関係者の意見を聞く前から、国は最初から決めていたことなんでしょ。国が決めたらどうしようもない。大丈夫かどうか、国も東電も信用してない。隠すからね」と不信感をあらわにした。同僚の女性も「実害か風評かわからない。東電と国だからね。海洋放出したら、子どもらに海に遊びに行くなっていう。触れさせたくない」と硬い表情で話した。
 刺し網漁の魚のケースを洗っていた女性(44)は「絶対に反対。結論は決まっていて形式的に関係者に聞いただけじゃないの。国は魚をすべて買ってほしい。それに福島だけの問題にされても困る。流せば全国や輸出にも影響するでしょう。30年も流し続けるって、この先、またどうなるかわからなくなる。自分の子どもは継がせたくない」と語った。

福島第一原発の処理水 1~3号機では事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)への冷却水と、原子炉建屋内に流れ込んだ地下水や雨水が混ざり汚染水が大量に発生し、多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化してからタンクに保管。技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれ、約7割は浄化が不十分でトリチウム以外の放射性物質が国の排出基準を超えて残るため、東京電力は放出前に再浄化する。トリチウムの放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出。トリチウムの放射能は約12年で半減する。

PR情報

社会の新着

記事一覧