<山崎まゆみのバリアフリーで行こう>障害のある妹との旅 誰もが気兼ねなく

2021年4月14日 07時28分

「バリアフリー温泉」を取材中の筆者

 今でいう「バリアフリー」を意識し始めたのは幼少の頃です。
 私には2歳下の妹がいました。妹は2歳の時、事故で身体に障害を負いました。妹を中心に、祖父母も含め家族6人が結束するのが山崎家の在り方でした。
 妹と一緒にバリアフリーの環境が整っているグアムへ旅行したのは1990年代前半。その後、家族で国内を旅行しましたが、温泉旅館には行きませんでした。当時の私は「日本家屋の風情を重んじる旅館はバリアフリーとは対極である。まして浴場は滑りやすいため、危ない」と思い込んでいたのです。
 2012年に妹を見送った後に、妹でも温泉に入浴できる環境があったことを取材で知りました。情報さえ得ていたら、最後に家族旅行ができたのにという後悔ともに「どんな身体の状態の方にも温泉を諦めてほしくない」という願いを抱きました。
 以来、ハード・ソフト両面で身体の不自由なお客を受け入れ慣れている「バリアフリー温泉」を取材し、その周知に力を注いできました。同時に、温泉地や旅館が受け入れやすくなるように環境整備のお手伝いもしてきました。
 06年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)が、16年には「障害者差別解消法」が施行されました。国内のバリアフリーを巡る状況は、変化しています。
 東京オリンピック・パラリンピックの開催決定でその流れが加速し、ユニバーサルデザインを意識した街づくりが進みました。現在は、観光庁もユニバーサルツーリズムの推進に力を入れ、宿泊施設のバリアフリー整備に取り組んでいます。
 18年7月から先月まで本紙に執筆してきた「ようこそ!バリアフリー温泉」をリニューアルした本連載は、温泉地や旅館も紹介しながら、出かけしやすい首都圏近郊のスポットもご案内します。
 「バリアフリー」という言葉をわざわざ使わずとも、誰もが旅を楽しめる、気兼ねなく出かけやすい社会になることを願っています。 (温泉エッセイスト)
<やまざき・まゆみ> 新潟県長岡市生まれ。国内外1000カ所以上の温泉を巡り、「幸せな一期一会」をテーマに各種メディアでリポートしている。跡見学園女子大兼任講師(観光温泉学)。内閣官房による「ユニバーサルデザイン2020評価会議」に参画。著書に「行ってみようよ! 親孝行温泉」(昭文社)など。

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