「世界最悪の人道危機」に終わり見えず イエメン内戦開始から6年…サウジ対イランの代理戦争で深刻化

2021年4月14日 17時00分
 内戦が続く中東のイエメンで、サウジアラビア率いる連合軍の介入が始まってから、3月下旬で6年が過ぎた。介入後、ハディ暫定政権と反政府武装組織フーシ派の戦闘はサウジ対イランの代理戦争へと発展。飢餓や感染症を誘発した。400万人以上の国内難民を生んだ内戦は「世界最悪の人道危機」とも呼ばれ、いまだ終息の気配を見せない。 (カイロ・蜘手美鶴)

◆18歳の嘆き「未来はない」

3月下旬、カイロ市内で、サレハ前大統領の肖像画を見つけ、足を止めるアフマドさん。内戦前のイエメンを思い出すという=蜘手美鶴撮影

 3月下旬、エジプトの首都カイロにあるイエメン人街。イエメン難民アリ・アフマドさん(43)は路上で売られていたサレハ前大統領の絵を見つけ、手を伸ばした。母国から逃れてきて約6年。「前大統領が好きなわけじゃないが、昔が懐かしくて…」と打ち明けた。
 内戦前、アフマドさんの出身地の首都サヌアは、世界遺産の旧市街で知られる美しい街だった。現在はフーシ派の支配下にあり、繰り返される空爆で地面には大きなクレーターができ、住宅の窓ガラスも多くが吹き飛んだままという。
 内戦の影響は全土を覆い、医療体制の崩壊でコレラやデング熱がまん延し、国連によると、国民の66%が食料支援などを受けている。多くの子どもは学校に通えず、サヌアに住むアフマドさんのおいサナッドさん(18)は取材に「空爆で学校が吹き飛び、勉強もできない。イエメンは終わった。未来はない」と嘆いた。

◆混乱の始まりは「春」

2月下旬、イエメン南東部タイズの病院で、爆撃で負傷し治療を受ける子ども=関係者提供

 混乱の始まりは、10年前の中東民主化運動「アラブの春」だった。チュニジア、エジプト、リビアでは民衆デモで長期独裁政権が倒れ、イエメンでも30年以上続くサレハ政権の退陣を求めてデモが本格化。2012年2月に政権は崩壊したものの、他国と同様、民主化への移行が難航した。
 混乱が続く中、勢力を拡大したのが、イランと同じイスラム教シーア派の流れをくむザイド派指導者アブドルマリク・フーシ氏だった。15年1月にはサヌアを掌握し、暫定政権がアラブ連盟に軍事介入を求めたことで、内戦に突入した。

2月、イエメン北東部ハッジャ県で、難民キャンプで生活する家族=関係者提供

 イエメン内戦は、シリアやリビア内戦と比べても代理戦争の色合いが濃い。イランはフーシ派にミサイルや無人機を与え、敵対するサウジ国内の空港や石油施設への越境攻撃を繰り返す。サウジは暫定政権を自国の首都リヤドで保護し、イエメン中部マーリブを拠点に、イランが支えるフーシ派支配地域を空爆する。

◆バイデン政権の影響で変化の兆しも

 一方、米国のバイデン政権誕生でサウジに変化の兆しも見られる。人権重視のバイデン政権は2月上旬、サウジのイエメン攻撃に関する支援を「全て打ち切る」と発表。トランプ政権が決めたフーシ派のテロ組織指定も、「イエメンの食料や燃料調達に打撃を与える」として解除し、サウジとの蜜月関係を見直す姿勢を鮮明にしている。
 こうした動きを受け、サウジは3月下旬、暫定政権とフーシ派に向け、全土停戦を含む新和平案を提案。フーシ派は「内容が不十分」などと拒絶したが、米国務省は「正しい方向への一歩」とサウジを評価した。
 エジプトに住むイエメン人の評論家アデル・ロバイエ氏は「停戦に前向きな姿勢を示し、米国に『圧力をかける相手はサウジではなくフーシ派(イラン)だ』とメッセージを送っている」と指摘。実際に停戦につながるかについては、「イエメン内戦はイランを巡る地域紛争の一部にすぎない。中東諸国とイランとの対立が解消されない限り、停戦は難しいだろう」との見方を示した。

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