尾行、取材妨害された本紙記者 モスクが酒場に…閉鎖や爆破も 米中対立の焦点・新疆ウイグル自治区は今

2021年4月14日 06時00分
 中国の新疆しんきょうウイグル自治区での人権侵害を巡り、米国と中国の対立が激しさを増している。その舞台である同自治区南部の3都市を訪れると、少なくとも15カ所のモスク(イスラム教礼拝所)の閉鎖・破壊が確認できた。ワシントンで16日に開かれる日米首脳会談ではウイグル問題への対応も焦点となり、日米首脳の発言が注目されている。 (新疆ウイグル自治区で、中沢穣、写真も)

カシュガルで3月下旬、門が閉ざされたモスクだった建物。営業していたカフェは閉店し、内部は建築資材などが散らばっていた

◆イスラム教徒80%の地区で

 羊の枝肉が店先にぶら下がり、平たいパンの香りが漂うカシュガル旧市街。イスラム教徒のウイグル族が人口の80%を占め、中央アジアの風情だ。しかし訪ね歩いた6つのモスクはいずれも門を閉ざし、イスラム教を象徴する「三日月」はない。郊外の一つも門が板でふさがれていた。
 このうち旧市街の1カ所は、建物の一部が「酒吧(バー)」に改装されていた。「以前はモスクだったよ」。ウイグル風の店内で、漢族の店主は悪びれる様子もなかった。
 カフェに転用されたと海外メディアが報じた複数のモスクでは、施錠された門のすきまから散乱した廃材などが見えた。報道後に批判を恐れた当局がカフェを閉じさせたようだ。

◆話し掛けると割り込まれ

 中国最大のモスク、エイティガール寺院は見学できるものの、観光客とみられる漢族男性ばかり。カシュガルは「民族団結」のモデル都市として観光地化が進むが、ウイグル族住民に話しかけると、記者を尾行する男が割って入る。取材を妨げる意図は明らかだ。
 小都市ホータンやヤルカンドの状況はさらに深刻だった。カシュガル同様にウイグル族が人口の大部分を占める「南疆」と呼ばれる地域だが、探した小規模モスク8カ所のうち、それらしき建物があったのは1カ所だけ。ほかは建物が完全に撤去され、跡地は広場や公園だったり、工事中だったりした。ホータンのモスク跡地の公園で、ウイグル族とみられる男性に「ここはモスクだったのでは」と尋ねると、「どうしようもない」と小声で答えた。

◆弾圧強める習近平政権

 モスク破壊が注目されたきっかけは、昨年9月に公表されたオーストラリア戦略政策研究所の報告書だ。衛星画像などから自治区内にあるモスクの3分の1に当たる約8500が破壊されたと推計し「文化遺産の消去や改変」と非難した。
 2010年代半ばまで、共産党政権の抑圧策に反感を募らせたウイグル族が漢族と衝突する事件が相次ぎ、「当局にはなすすべがないという感覚があった」(党関係者)。この時に習近平しゅうきんぺい政権が選んだのは、抑圧策の一層の強化だ。政権はイスラム教を「過激思想の温床」と決めつけ、18年施行の同自治区「脱過激化条例」などで宗教活動への管理強化を進めた。当局の目が届きにくい小規模モスクの閉鎖もその一環だ。
 習政権は一連の政策によって治安が安定し、4年間も「テロ事件がない」と正当性を強調。モスク閉鎖については「建物の老朽化への対応」(自治区報道官)などと説明する。同研究所は米政府から資金提供を受ける「反中組織」と断じ、人権侵害批判には「世紀の大ウソ」と主張している。

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