<がん治療の新常識・手術して20年 「今」を見てみたら>(3)患者負担少ない腹腔鏡手術

2021年4月15日 07時17分
 −最近の大腸がんの手術はどうなっていますか?
 「九割ぐらいは腹腔(ふくくう)鏡手術になっています。瀬口さんも、今なら腹腔鏡の手術だったと思います」
 二十年前に私の大腸がんの手術をしてくれた田中岳史先生に、二十年の月日でどれだけ医療は進んだのか質問をぶつけると、こんな返事が返ってきた。
 おなかの壁と臓器の間(腹腔内)に炭酸ガスを入れて膨らませ、へそ近くから高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入。手術操作に用いる鉗子(かんし)を挿入する五〜十ミリの小さな穴を左右に計四〜五カ所に開け、腹部をモニターカメラに写しながら、大腸や周囲のリンパ節の切除を行うのが腹腔鏡手術だ。大きく開腹しないので患者の負担は少ない。
 手術する側にとって良い点は?
 「外科医にとっての利点は視野が良いことですね」
 視野とは?
 「骨盤の中は臓器が密集していて直腸がんは手術がやりにくいのです。昔は手術野を直視することが難しい場面も多々ありました。腹腔鏡では小さいテレビカメラが手術野のすぐ近くまで入るので、よく見えて手術がやりやすい。患者にとっても小さな穴が四つ、五つ残るだけだから回復が早い、痛みも少ないなど負担が少ない」
 早期の大腸がんは、へそに穴を一つ開けて腹腔鏡手術をすることもある。手術痕はへその中なので外から見ても分からない。
 「腹腔鏡はトレーニングを重ねた上で実施します。ベテランと若手の間で成績の差が少ないのも特徴です。進行がんでも今は腹腔鏡がファーストチョイス。昔は手術できなかった進行がんでも、抗がん剤によって手術可能になるまで小さくして腹腔鏡で手術します。機器の進歩は早い。生存率も高い。ステージIなら五年生存率はほぼ100%」
 大腸がんが腹腔鏡手術の対象になったのは二〇〇〇年代に入ってからだ。私が手術を受けた〇一年一月はまだまだ発展途上の技術だった。進行がんの長期成績は従来の開腹手術に劣らないことが確認され、進行がんに対する保険適用も認められた。
 個人的に気になる腹腔鏡と腸閉塞(ちょうへいそく)との関係は?
 「術後の癒着が少ないので腸閉塞が起きることは減っています。あっても軽く済む。腹腔鏡手術は切除前日に入院して三日ほどで退院できる。手術の翌日から水分や流動食を取ることができますから身体の活動の回復が早く、手術の影響からも早く離脱することができます」
 技術の進歩で腸閉塞になる率が下がったという。素晴らしいことだ。 (瀬口晴義)

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