舞台「千と千尋−」はミュージカルにしない 名匠ケアード、音楽に頼らず世界観

2021年4月15日 07時18分

舞台版「千と千尋の神隠し」のポスター。主人公の千尋が舞台でも奮闘する(C)2001 Studio Ghibli・NDDTM提供

 宮崎駿監督が手掛け、大ヒットしたスタジオジブリのアニメーション映画「千と千尋の神隠し」(二〇〇一年)が舞台化される。東宝は記者会見で来年二月の初演に向け、ミュージカルではなくストレートプレイ(せりふ劇)として制作を進めると説明。どのような手法で、ジブリ特有の世界観、作品の魅力を表現するのか−。 (小杉敏之)
 東宝によると、ジブリ作品の舞台化構想は二〇一七年秋からスタジオジブリと共有してきたといい、ついに形になることになった。
 翻案と演出は、英ロイヤル・シェークスピア・カンパニーの名誉アソシエイトディレクターのジョン・ケアード。ミュージカル「レ・ミゼラブル」の潤色と演出などで知られる名匠は、かねて構想実現に強い意欲を示してきた。舞台化にあたり「宮崎駿作品の主要テーマ全てに同調しています」とコメントを寄せた。
 映画「千と千尋−」は、神々が暮らす不思議な世界に迷い込んだ少女千尋が、豚にされた両親を助けて元の世界に戻るため、懸命に生きる姿を描く。千尋役は橋本環奈=写真(左)=と上白石萌音(もね)=同(右)=のダブルキャスト。東宝の池田篤郎常務はジブリ作品には「環境、多様性、平和、共生といったキーワードが盛り込まれている」といい、その中でも「千と千尋−」には「見る人に生きる力を与える。勇気が湧き、自分が再生していく気持ちになる」と説明する。
 そんな訴求力の高い作品性を、いかに尊重しながら舞台に落とし込むのか。ストレートプレイを採用するケアードの判断について、池田常務は「音楽に頼らずとも、この作品をプロデュースできると確信したからではないか。ジョンという人は、人間が究極、どこまで表現できるかにこだわる。驚くような工夫をしてくると思う」。
 人気アニメ映画の舞台化は、歌や音楽、ダンスを結合したミュージカルが多い。ディズニーの「美女と野獣」「アラジン」「アナと雪の女王」などがよく知られている。漫画やアニメ、ゲームを基にした「2・5次元ミュージカル」も定着した。松竹は「ワンピース」「NARUTO」「風の谷のナウシカ」を歌舞伎化し、和楽器などの演奏で彩った。
 東宝も漫画「花より男子」などをミュージカル化してきたが、ストレートプレイによる舞台化は挑戦的。
 千尋を演じる二人もコメントを発表。橋本は「日本の宝とも言うべきこの作品は、恐らくこれから何回も上演されるのだと思います。その舞台の歴史を自分たちがつくってゆくのだと思うと、強く責任を感じます」、上白石も「時代も国境も超えて愛され続ける作品の一ピースになれるのは大変光栄なことです。素朴で勇敢な少女を、リスペクトを込めて演じさせていただきます」とそれぞれ意気込みを示した。
<舞台版「千と千尋の神隠し」> 東宝創立90周年記念作品として制作され、2022年2〜3月、東京・帝国劇場を皮切りに各都市で上演。4月から大阪、福岡、札幌を巡演し、6〜7月の名古屋で終演する。海外での上演も視野に入れる。映画「千と千尋−」は03年の米アカデミー賞長編アニメ賞を受賞するなど国際的にも評価が高く、舞台化は初めて。

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