「幸福の国」の幸せ、問う 映画「ブータン 山の教室」ドルジ監督

2021年4月15日 07時19分

パオ・チョニン・ドルジ監督

 「国民総幸福」という独自の指標を掲げる伝統の王国も、近代化の波に揺れているという。東京・神保町の岩波ホールで公開中の映画「ブータン 山の教室」は、同国の原風景を映す。日本人の想像を絶する辺境で生きる人々の営みが、豊かさの本質を問う。
 オーストラリア移住を夢見る教師のウゲン(シェラップ・ドルジ)が、標高4800メートルにあるルナナ村への赴任を命じられる。首都から1週間以上かかる道のりは、険しい山道。到着すると、電気もなく近代文明から隔絶された環境に戸惑う。しかし、粗末な設備の学校で、目を輝かせて教えを請う子どもたちや大自然に感謝して暮らす人々の姿に触れ、ウゲンの気持ちは変化していく。
 パオ・チョニン・ドルジ監督は、先進国の都会に憧れる主人公にブータンの若者意識を代表させた。固有の伝統文化を重んじ、長く鎖国政策を取ってきた同国だが、1999年のインターネット解禁を機に外国文化が流入。幼少期を海外で過ごしたドルジ監督が10代の時に帰国すると「人々の家に飾られていた写真が、国王からベッカムに変わっていた」。国際化の代償に意識が向かい「日本の科学技術のように、国を代表するものがブータンには文化しかない。それが失われていくのでは」との危機感から、今回の映画製作に取り組んだ。
 ルナナでの撮影のため、1年がかりで機材や食料を運搬。映画を見たことがない村民が、彼ら自身の役を演じた。歯磨き剤を知らない子どもたちが初めて歯を磨いて驚く様子など、生き生きとした素の表情を逃さず「その純粋さをとらえたかった」と話す。 (古谷祥子)

映画の一場面


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