<社説>東芝社長辞任 企業統治の混乱収拾を

2021年4月15日 07時22分
 東芝の車谷暢昭社長が辞任した。外資による買収提案で社内が混乱したことが背景にある。電力供給や原発の除染など公共性の高い事業に深く関わる企業であり、企業統治の安定化が急務だ。
 車谷氏は三井住友銀行の元副頭取で昨年四月から東芝社長として経営立て直しの陣頭指揮を執っていた。この間、東京証券取引所の一部復帰を果たすなど一定の実績は上げたと評価できるだろう。
 しかし、外資を中心とした「物言う株主」から経営方針について厳しい批判を受け続け、再任を危ぶむ声も出ていた。
 今月に入り英国系投資ファンドが買収に名乗りを上げた。ただ車谷氏自身がこのファンドの元経営者で買収案に東芝の非上場化が入っていた。このため「株主対策として買収を画策したのではないか」と批判が強まっていた。
 買収提案の中身やタイミングを考慮すれば、疑念が噴出するのは当然だ。もし株主からの批判逃れが念頭にあったのなら、経営の常道から外れた行為と指摘せざるを得ない。
 発電設備から鉄道、上下水道、エレベーターなど広範な事業を手掛ける東芝には優秀な人材が多く、高い技術力を保持していた。
 だが二〇一五年に発覚した不正会計や米原発事業の失敗で経営は坂道を転がり落ちるように悪化。人材は流出し強い競争力を持つ半導体事業でさえ売却に追い込まれた。さらに今回、またしても経営をめぐる混乱が露呈した。
 一連のトラブルの大半は、経営幹部らの不適切な行為や重大なミスが招いた。社長に復帰する綱川智氏を筆頭とする経営陣は、これまでの過ちを繰り返さないよう肝に銘じてほしい。
 東芝に対しては米系ファンドからの新たな買収案も出ている。ただ東芝は、原発関連を含む電力という社会基盤事業を担っている。利益追求を最優先する外資への売却は慎重に判断する必要がある。
 今後、新経営陣は厳しい要求を突きつける株主と向き合うことになる。しかし本業で収益を上げていけば要求は弱まるはずだ。売却した半導体事業の買い戻しも視野に入れ、綿密な経営戦略を直ちに構築すべきだ。
 ただ巨大企業である東芝の経営には取引先も含め多くの人々の暮らしがかかっている。
 足元の決算を乗り切るために人員削減など雇用不安につながる選択だけは避けるようくぎを刺しておきたい。

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