スパイまざり収容者を監視か…新疆ウイグル自治区、「強制収容所」と指摘される施設とは

2021年4月15日 20時05分
 中国新疆しんきょうウイグル自治区の少数民族ウイグル族を標的にした「ジェノサイド」(民族大量虐殺)が行われていると非難する米政府に対し、習近平政権は「世紀の大ウソ」と反発する。100万人の強制収容や強制労働、不妊手術の強要などが指摘される現場で、何が起きているのか。(カシュガルで、中沢穣、写真も)

◆無言で両手を広げ道をふさぐ男

 中国最西端にある同自治区カシュガル地区は、人口の9割を占めるウイグル族と漢族の対立の最前線となってきた。その郊外にオーストラリア戦略政策研究所の報告書が「最も厳重な管理」と分類する「強制収容所」の一つがある。
 地図には記載がないため同研究所が公開する衛星画像を頼りに、砂ぼこりの舞う道を歩くと、男2人が両手を広げて道をふさぐ。「なぜ通れないのか」と尋ねても無言。振り返れば、尾行してきた男がカメラを向けている。施設は数百メートル先だが、近寄れそうにない。

カシュガル郊外で3月下旬、「強制収容所」と指摘される施設へ続く道をふさぐ男

◆「強制収容所」なのか、違うのか

 報告書は、自治区内には380以上の「強制収容所」があると指摘する。一方、当局は、一連の施設は「強制収容所」ではないという立場だ。貧困やテロ対策を目的に、中国語や法律、職業技能を教える「職業技能教育訓練センター」にすぎないと主張してきた。
 通行を阻まれた場所から数キロ東には、報告書が管理レベルが低いと分類する別の「強制収容所」があり、フェンス越しにジャージー姿のウイグル族とみられる若者が見えた。

◆「入所は自由意思」本当か

 当局は、この施設を模範的な「職業技能教育訓練センター」として宣伝に使い、多くの見学者を受け入れてきた。対外強硬的な論調で知られる中国紙、環球時報の胡錫進こしゃくしん編集長は2018年にここを見学し、ネット上で「過激主義に染まった人々を正常な生活に戻すための誠実な努力を感じた。新疆の未来の希望をみた」と称賛している。
 しかし国際調査報道ジャーナリスト連合が19年に公表した当局の内部文書は施設の厳しい管理方法を記しており、「入所は自由意思」という当局の主張が揺らぐ。文書は「監視カメラの死角をつくるな」「厳格な秘密保持」「思想教育の徹底」のほか、携帯電話の所持や規定外での外部との接触も禁じ、スパイとみられる「情報員」を収容者に紛れ込ませることまで記載している。

新疆ウイグル自治区カシュガル郊外で3月下旬、豪研究所が「最も厳格な管理」と分類する施設とみられる建物

 当局は、報告書は「でっちあげ」、文書に基づいた報道は「悪意ある歪曲わいきょく」と反発するが、文書の真偽は明らかにしていない。

◆急増した刑事事件の起訴人数

 当局の説明と報告書は施設が現在も存続しているかについても対立する。当局は19年末までに「すべての入所者が訓練を修了した」という主張だ。報告書は17年以降に、胡氏が訪れたような管理レベルの低い収容所が減り、冒頭の施設のように厳戒態勢をとる収容所が増えたと指摘する。
 報告書の指摘は公式統計と符合する。自治区検察当局の発表によれば、自治区内で刑事事件で起訴された人数は13~16年の2万~5万人から、17年は22万人に跳ね上がり、18年は14万人、19年は10万人と高水準が続く。
 当局は「重大事件を再精査し、捜査から漏れた犯罪を法に基づいて再起訴した」と説明するが、テロ対策を名目に多数のウイグル族が偏見に基づいて拘束された疑いが残る。

◆イスラム教の結婚式も「過激主義」

 同自治区「脱過激化条例」は「過激主義」の分類に、イスラム教に基づいた結婚式や、女性の全身を覆う服などの慣習まで含め、イスラム教への偏見を隠そうともしない。オーストラリアに住むウイグル族男性は「すべてのウイグル族に、拘束された親族や知人がいる」と嘆く。

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧