海外で別姓婚の日本人夫婦 「法的な婚姻関係を認めて」 判決迫る 相続、税制で不利益

2021年4月16日 07時33分

夫婦であることの証明を求める訴訟の判決を待つ想田和弘さん(左)と柏木規与子さん

 海外で別姓のまま結婚した日本人夫婦が、国に婚姻関係の確認を求めた訴訟の判決が二十一日、東京地裁で言い渡される。夫婦同姓が法律上のルールになっている日本で、海外で成立した別姓婚は法律婚として認められるのか。国際的に活動する日本人も増える中、判決の行方に注目が集まっている。原告らに思いを聞いた。 (砂本紅年)
 原告は、映画監督の想田和弘さん(50)と、妻の映画プロデューサーの柏木規与子さん。日米を拠点に活動する二人は一九九七年、米ニューヨークの市庁舎で結婚式を行った。「互いのルーツや違いを尊重したい」と別姓のままの結婚を選び、婚姻証明書も受け取った。
 日本の婚姻届の提出は見合わせた。日本では当時、夫婦別姓を選べる民法改正の機運が高まっていたため、「改正後に婚姻届を出そう」と考えたからだ。しかし、今も改正には至っていない。
 柏木さんは米国での結婚後、日本で配偶者ビザを更新しようとしたところ、米国領事館の日本人職員から「別姓だから夫婦ではない」と追い返されたという。米国人の領事に直接、事情を話して夫婦と認められ事なきを得たが、「今後も夫婦として扱われない危険がある」と心配に。別姓で婚姻届を出したものの受理されなかったため、想田さんとともに二〇一八年、法的に夫婦であることの証明を求めて提訴に踏み切った。
 原告代理人の弁護士、竹下博将(ひろゆき)さん(45)は、外国の法律の適用ルールなどを定めた「通則法」に着目。「婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による」(二四条二項)との条文から、米国での別姓婚は日本でも認められると指摘する。
 しかし、日本の法制度では同姓にしない限り、婚姻届が受理されず、戸籍にも反映されない。想田さんは「(通則法で)海外での別姓婚を認めながら、戸籍にそれを反映させないのは法律の不備」と主張。夫婦なら本来受けられるはずの相続上や税制上の恩恵を得られないなど、不利益を被りかねない状況を訴える。
 これに対し、国側はあくまで別姓のままの結婚を認めない構え。「夫婦が称する姓を定めておらず、夫婦同姓にする意思がない。婚姻が成立しているとは言えず、婚姻関係の証明はできない」と反論する。
 他方、日本の法制度では、日本人と外国人が結婚すると、互いの生来の姓を名乗ることができる。戸籍の身分事項の欄にも婚姻が記載され、夫婦であることが証明される。竹下さんはこのケースを引き合いに、「原告の場合も戸籍の身分事項欄への記載や、婚姻証明書の発行などで婚姻関係を証明できるはず」と主張。「改姓で結婚前の実績を失うことを避けるため、あえて海外で結婚するカップルも少なくない。どんな判決であっても、選択的夫婦別姓制度を巡る議論に拍車が掛かるだろう」と話す。
<選択的夫婦別姓> 1996年、法相の諮問機関である法制審議会が夫婦別姓を選べる民法改正を答申したが、自民党の一部議員の反対などでいまだに実現していない。国連の女性差別撤廃委員会からは、女性が生来の姓を維持できるよう再三勧告されている。市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」によると、政府に制度導入や議論を求める地方議会の意見書は累積200件を超えている。

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