長女が硬い表情で「ここにいたい…」中国当局に家族引き裂かれ「宣伝」に怒り 新疆ウイグル自治区

2021年4月17日 06時00分
 「当局のプロパガンダ(宣伝)だ。家族を引き裂くだけでも残酷なのに…」
 オーストラリアに住むウイグル族のマムトジャン・アブドレイムさんは3月下旬、中国国営の中国国際テレビ(CGTN)に映った長女(10)の姿にくぎ付けとなった。中国新疆しんきょうウイグル自治区カシュガルにいる家族とは5年以上も会っていない。

マレーシア・クアラルンプールで2015年10月に撮影したアブドレイムさん一家の写真。この2カ月後から家族は離れ離れになった(アブドレイムさん提供)

◆「ママもパパもいない」

 しかし、すぐに怒りがこみ上げてきた。長女は、祖父母と幸せに暮らしているとして「カシュガルにいたい」と硬い表情で語った。アブドレイムさんが一方的に家族と連絡を絶ったとされ、高齢の父が「帰ってこい」と呼び掛ける場面もあった。アブドレイムさんは「連絡してもつながらない。CGTNがウソを強いたのは明らかだ」と憤る。
 この報道は米CNNテレビなどの取材に応えたことに対する当局の圧力とみる。実はこの10日ほど前、CNNもアブドレイムさんの許可を得て実家を取材していた。この時、長女は「ママもパパもいない。会いたい」と涙を流した。
 アブドレイムさんによると、マレーシアで暮らしていた2015年12月、妻はパスポート更新のため子ども2人と一時帰国した。だが当局は必要書類を没収して再出国させなかった。妻は抑圧が強まった17年に拘束され、19年にいったん釈放されたが、すぐに再拘束された。自身も帰国すれば拘束されると恐れる。複数の国際人権団体は、アブドレイムさん一家のように引き裂かれたウイグル族の家族が世界各地で数千にのぼると批判する。
 自治区政府は昨年1月から33回も記者会見を開き、多数のウイグル族を動員して「幸せに暮らしている。批判はでたらめだ」などと反論させている。

新疆ウイグル自治区ホータン郊外で3月下旬、ウイグル族が強制労働されていると指摘される工場=中沢穣撮影

◆中国当局は宣伝攻勢

 当局の宣伝攻勢は外国企業も巻き込み、強制労働への懸念から新疆綿の不使用を表明したファッションブランドH&Mなどが不買運動の標的となった。当局は欧米の批判に対抗するため国民の愛国心をあおる。
 昨年9月のオーストラリア戦略政策研究所の報告書は、「強制収容所」で中国語の習得や技能訓練を終えたウイグル族らが、中国各地で強制的に働かされていると指摘。強制労働の疑いが指摘された各地の工場など34カ所に電話取材すると、ウイグル族の雇用を4カ所が認めたが、詳細には口をつぐんだ。ほかに2カ所が否定したが、残りはいずれも取材に応じなかった。
 当局は「就職は自由意思だ」と主張する。しかし、自治区南部ホータンやヤルカンドでは、強制労働が疑われる工場などに近づいただけで「何をしているのか」ととがめられ、内部の様子はわからなかった。
 「『以疆制華』(新疆をもって中華を制す)のたくらみを許さない」
 中国メディアや当局者は最近、こんな表現を盛んに使う。ウイグル問題に関する欧米の批判は、中国を抑え込むための口実にすぎない、との認識だ。アブドレイムさんらの苦しみは視野にない。(新疆ウイグル自治区で、中沢穣)

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