海洋放出する「処理水」で魚の飼育も 東電が福島第一原発での方針表明

2021年4月16日 20時37分
 東京電力は16日、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で発生する汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出処分を政府が決めたことを受け、今後、風評被害が出た場合は「期間や地域、業種を限定せずに賠償に応じる」などの対応方針を発表した。(小川慎一、小野沢健太)

福島県の内堀雅雄知事(左)と面会する東京電力の小早川智明社長(右手前から2人目)=16日午後、福島県庁で

 小早川智明社長は福島県内で記者会見し、「事故当事者としての覚悟と責任を持ち、私が先頭に立って主体性を持って取り組んでいく」と述べた。

◆風評被害の賠償 期間、地域、業種を問わず

 東電によると、放出前には、処理水に含まれるトリチウム以外の放射性物質の濃度が排出基準を下回るまで浄化処理を繰り返し、海水で薄めた処理水で魚類などを飼育して安全性を確認する。放出の1年前から、海水や魚類などに含まれるトリチウムの量も調べる。
 処理水を保管するタンクは2022年秋ごろに満杯になる見通し。放出開始は設備の整備や審査で早くても23年になるため、タンクが足りなくなる可能性が高い。福島第一の廃炉責任者の小野明氏は会見で「しっかり検討する」と増設には触れなかった。

◆福島県漁連との約束 東電社長「反故にしない」

 処理水の処分を巡って、東電は15年に当時の社長名の文書で「関係者の理解なしでは海洋放出などの処分はしない」と福島県漁連に約束した。小早川氏は会見で「約束を反故にすることはない」と明言したものの、理解を得られない場合は放出しないのかとの質問には、「理解を得たい」と述べるにとどめた。
 小早川氏は会見前、県庁で内堀雅雄知事と面会し、方針を説明した。
 知事は面会後の報道陣の取材で、柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策不備など東電の不祥事が続いていることに「県民に大きな不安や憤りがあるのが現実」と指摘。ただ「処理水の処分は必ずやりとげなければならない重要課題。2年後に向けて、できると立証してもらうことが何よりも重要」と、放出自体は容認する姿勢を示した。

福島第一原発の処理水 1~3号機では事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)への冷却水と、原子炉建屋内に流れ込んだ地下水や雨水が混ざり汚染水が大量に発生し、多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化してからタンクに保管。技術的に除去できない放射性物質トリチウムが含まれ、約7割は浄化が不十分でトリチウム以外の放射性物質が国の排出基準を超えて残るため、東京電力は放出前に再浄化する。トリチウムの放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出。トリチウムの放射能は約12年で半減する。

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