<食卓ものがたり>シャキ!注いだ愛情、食感に フキ(愛知・知多半島)

2021年4月17日 07時48分

愛知早生ふきを収穫する小野善理さん=愛知県知多市で

 愛知・知多半島の北西部に位置する知多市。伊勢湾を見下ろす高台に「愛知早生(わせ)ふき」を育てるビニールハウスが並ぶ。愛知早生ふきはその名の通り、愛知生まれの品種。全国で栽培されるフキの七割を占める。
 栽培農家の一人、小野善理(よしみち)さん(55)のハウスを訪れると、直径三十センチほど、大きな皿のようなフキの葉が一面に広がっていた。地中から伸びる茎のような「葉柄(ようへい)」は高さ一・二メートルほど。これが、真ん中に穴の開いた食用部分だ。小野さんはしゃがみ込み、根元から鎌でザクッと刈り取った。
 「傷や病気に弱いので元気に育つよう気を使う」。温度や湿度の調整は、こまめに窓を開け閉めしたり、ハウスを覆うビニールを二重にしたり全て手作業。水やりもフキの状態を見ながらだ。小野さんは「温度や水の量は肌感覚」と話す。
 知多半島でフキの栽培が始まったのは江戸時代とされる。昭和に入り、半島に水を供給する愛知用水が整備されたことや、ノリ養殖が盛んだった沿岸部に製鉄所ができ、フキ栽培にくら替えした農家が多かったことが、生産量の増加につながった。
 本来の旬は二〜五月。しかし、半島では葉柄を刈った後の根株を冷蔵庫に入れて季節を勘違いさせることで、十月以降に再び収穫する。この秋フキも合わせ、JAあいち知多管内の知多、東海両市、南知多町では年間約千七百トンを出荷。その量は、フキの国内シェアの約四割に達する。
 ただ、高齢化が進み、二十年前に二百軒あった農家は五十七軒に。生産量も減っている。昨年からはラップできっちり巻いていた出荷時の梱包(こんぽう)を、ポリ袋に入れるように変え、農家の負担を減らそうと模索する。小野さんは「先輩方から脈々と受け継いできた伝統を感じながら食べてもらえたら」と話す。
 文・写真 熊崎未奈

◆味わう

 愛知県の伝統野菜に詳しい、あいち在来種保存会代表の高木幹夫さん(71)は「愛知早生ふきはシャキシャキと食感がよくて香りが豊か。さっとゆがいて、かつお節としょうゆをかけるだけでもおいしい」と話す。
 水洗いし、鍋に入る長さに切ったら、塩でもんであくを抜く。太い部分から鍋に入れ、透き通るまで2〜3分ゆがいたら、冷水につけて筋を取る。すぐ冷水にさらすと、色がきれいに出るという。しょうゆの代わりに、マヨネーズをつけたり、タケノコなど春の食材と合わせたりしてもいい。

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