<社説>消火設備で死亡 教訓が生きていない

2021年4月17日 07時57分
 東京都新宿区のマンション立体駐車場の消火設備から二酸化炭素(CO2)が噴出し、五人が死傷した。昨年来、名古屋市や都内で似た事故があり、消防庁は注意を促したが、生かされなかった。
 今回の事故で、作業員五人は十五日朝から、地下一階駐車場の天井の張り替え作業をしていた。午後五時すぎ、何らかの原因で消火設備が作動。シャッターが下りて密閉空間となり、CO2が充満したとみられる。警視庁は業務上過失致死の疑いで調べている。
 この消火設備は火や煙を察知すると、自動的に大量のCO2を噴出し、酸素濃度を下げて火を消す。水や消火剤による消火と比べて、車や機器、電気系統を汚損せずに済み、CO2の長期間貯蔵も可能なため、一九六〇年代から駐車場や通信機器室、ボイラー室などで広く採用されている。
 人は高濃度のCO2を吸うと、中毒や酸素欠乏症に陥り、時に死に至る。以前からたびたび事故が報告され、消防庁は九〇年代に、工事や点検時には設備を熟知した消防設備士らの立ち会い、安全装置の設置などを求める通知を出した。しかし、昨年十二月、名古屋市中区のホテル地下駐車場で、作業員が消火設備の起動ボタンを誤って押したとみられる事故が発生し、作業員が死亡。今年一月には東京都港区のオフィスビルの地下一階駐車場で、設備の点検をしていた作業員三人が死傷した。
 こうした二件の事故を受け、消防庁は一月下旬、都道府県のほか、消防設備や駐車場の関係団体、業界などに、安全対策の再徹底を求める通知を出した。しかし、なぜ、この短期間にまたも犠牲者を出してしまったのか。
 この消火設備は手動でも作動する。東京消防庁によると、起動装置のふたを開けると、周辺の人に避難を促す音声が流れ、そのうえで起動ボタンを押すと、最低でも二十秒が経過した後、シャッターが下り、CO2が噴き出す。誤操作に備えて非常停止ボタンもある。
 しかし、もし、設備に関する知識がなければ、事故は起こり得る。自治体や関係団体、業界は消防設備の点検や駐車場などを管理する事業者だけでなく、内装業者など下請け、孫請けに至るまで、すべての現場の人たちにこの設備の構造や安全対策が伝わるよう、直ちに徹底すべきだ。そのうえで、設備に構造的な欠陥はないのか、誤操作や誤作動を防ぐ手だては今以上にないのか、検証が求められる。 

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