コロナ禍 米アカデミー賞の行方は ネット配信作が台頭

2021年4月18日 07時32分

昨年3月、閑散としていた米ロサンゼルスのハリウッド=いずれもロイター・共同

 コロナ禍で延期となった第93回米アカデミー賞の授賞式が25日(日本時間26日)、ロサンゼルスで開かれる。この1年、映画産業の中心地のハリウッドが機能せず、米国内の映画館も大半が長らく営業できないなど、かつてないピンチが続いている。日本と比べ桁違いの感染者が出ている米の映画界は一体どうなっているのか。そして、そんな中で開催されるオスカーの行方は? (藤原哲也)

オスカー像

 「米国は映画館が本当にもう虫の息。大変な事態になっている」。カリフォルニア州在住の映画評論家、町山智浩は日本よりも厳しい事態を説明する。
 町山によると、昨年三月ごろからロスやニューヨークなど全米の主要都市の映画館は全て閉鎖され、休止は丸一年続いた。徐々に再開しているが、観客数は通常の定員の50%以下のため、特に小規模のミニシアターは危機的な状況という。大作の公開延期も相次ぎ、影響はいましばらく続く。「持ちこたえられないところも出てくる」とみる。
 ハリウッドでは映画製作が完全に停止。昨年九月ごろから、感染者の少ないニュージーランドなどに場所を移して撮影が再開された。ただし、現場で感染者が出たため撮影を中止したり、感染対策のため製作費が高騰したりと逆風は続いた。米の他の州では撮影が再開したが、ロスのスタジオなどはまだ本格的に使えていない状態という。
 加えて、今の動きを見ると映画ファンも大作以外は配信で観賞する傾向が強まっていて、この状況に上映側と製作側の双方が「共倒れする可能性が高まっている」と強調。製作費百億円以上の超大作を全世界で公開して、費用を回収してきたハリウッドの利益構造が根本から揺らいでいる。
 町山はさらに「映画館と映画(製作)会社、配信の三つどもえの業界再編も進んでいる」と指摘。今回のアカデミー賞でも配信のみの作品が多くノミネートされているが、内容も評価されているという。米国では大手映画会社が劇場公開と同時に配信するケースも出ていて、配信の存在感はより高まっているようだ。
 今年のアカデミー賞の授賞式は感染対策をした上で、例年のような形式の開催を目指しているようだ。主催する米映画芸術科学アカデミーが授賞式の放送権を販売して収入源としているため、「何が何でも普通の状態に近い形でやると聞いている」と町山は言う。
 肝心の賞の行方は−。最重要部門の作品賞は、最多10部門でノミネートされた「Mank マンク」をはじめ、中国出身の女性、クロエ・ジャオ監督が季節労働者のリアルな姿を撮ったロードムービー「ノマドランド」や、夢を追う韓国人移民の家族を描いた「ミナリ」などアジア系や女性に代表される多様性のある作品、非白人系の候補も増えている。そんな中、町山が有力とみるのが、ベトナム反戦デモを巡る実話に基づく法廷劇の「シカゴ7裁判」だ。

「シカゴ7裁判」(ネットフリックスで配信中)

 映画業界人の投票で決めるアカデミー賞は、「最もハリウッド映画っぽい作品が取る傾向にある」とした上で「スターも多く出ていて、今回一番それに近い作品」と解説。だが、「シカゴ−」は配信の作品。受賞すれば“歴史的事態”となる。「そうさせたくない映画界の人たちが何とか『ノマド−』に取らせようとするかもしれない」と複雑な事情を説明した。

「ノマドランド」(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

 この両作品については、元キネマ旬報編集長で映画評論家の関口裕子(ゆうこ)も有力視する。斬新な撮影手法が評判の「ノマド−」は「強烈な個性で本来ならこれ一択で行っちゃいそうな感じ」、「シカゴ−」も「法廷劇なのに飽きさせない演出とスピード感で見せていくのが素晴らしい」とそれぞれ評価した上で「ミナリ」にも可能性があると言及。ただ、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が昨年受賞しているため「面白い作品だが、今年は取らない感じがする」と予想する。

「ミナリ」(C)2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.

 昨年公開された数少ない超大作「TENET テネット」があまりノミネートされていないことも今回の特徴といえる。「作り手(投票する製作者や俳優)たちの意識が変わってきている」と関口。日本でも配信中や公開中の作品が多いことから「観賞しながら今回の賞の傾向について、自分で考えられる状況になっている」と話した。
 授賞式はWOWOWが26日午前8時半から生中継する。町山もリモート出演で解説する。 (文中敬称略)

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