<社説>首相「防衛強化」 軍拡競争を危惧する

2021年4月18日 07時42分
 菅義偉首相は日米首脳会談で「防衛力強化への決意」を伝えた。中国の軍事的台頭など厳しさを増す東アジア情勢に対応するためだというが、軍拡競争を加速させるのではないか、と危惧する。
 首相はバイデン大統領との首脳会談後の共同記者会見で「日米同盟の抑止力、対処力を強化する必要がある。防衛力強化への決意を(会談で)述べた」と表明した。
 首脳会談後の共同声明には台湾について「日米両国は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記された。
 米政権内では中国に対して「六年以内に台湾を侵攻する恐れがある」(デービッドソン・インド太平洋軍司令官)と警戒感が高まる一方、「同盟」重視の立場から安全保障条約を結ぶ日本の軍事的貢献や役割拡大への期待も強い。
 首相が防衛力強化の決意を大統領に伝えたのも、中台関係を巡る危機感を共有し、日本の軍事的役割の拡大を求める米政権の期待に応える側面があるのだろう。
 首相は共同会見後、記者団の取材に、台湾や尖閣諸島を巡る情勢について「厳しい状況が続いていることは事実だ」としながらも、「平和裏に解決することを最優先にしていく」と強調した。
 日米を含む国際社会が、中国の「力による現状変更の試みと地域の他者への威圧」に反対する姿勢を連帯して示し、問題の平和的解決を促すことは望ましい。
 そのために日本政府が外交に力を尽くすことは当然だ。
 しかし、首相が表明した防衛力の強化が憲法九条が許す「節度ある」範囲を超えれば、地域の軍拡競争を促し、逆に情勢を不安定化させる「安全保障のジレンマ」に陥る。それは避けねばなるまい。
 高額な米国製防衛装備の購入拡大で防衛力を強化すれば、年間五兆三千億円を超え、増額が続く防衛予算のさらなる膨張は避けられない。年間約二千億円に上る在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」の増額要求も強まるだろう。新型コロナウイルス感染症対応で厳しい財政状況が続く中、防衛予算の特別扱いに理解が得られるだろうか。
 台湾海峡で軍事衝突があった場合、日本は安全保障関連法に基づいて自衛隊を派遣し、米軍に協力することになるかもしれない。
 同法には違憲訴訟も提起されている。いくら「同盟」関係にあるとはいえ、憲法が許す範囲内かどうかは問い続ける必要がある。

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