[クモの中] 岐阜県大垣市 山田良高(62)

2021年4月18日 08時45分

◆わたしの絵本

イラスト・まここっと

◆300文字小説 川又千秋監修

[小さな幸せ] 愛知県高浜市・主婦・42歳 川崎香保里 

 庭の小さな畑で、小松菜を作ることにした。
 11月中旬、ちょっと遅くなってしまったが種を蒔(ま)くことにした。
 少しずつ、ちびちび蒔いていると、幼い息子がやってみたいと言う。
 それなら、とやり方を教えて任せたものの、種はドバドバッと蒔かれ、そのまま土をかぶせられてしまった。
 やがて、息子が種を蒔いたところだけ、森のように芽が出てきた。
 間引きしたら土が崩れて全部抜けてしまいそう。仕方なく、そのままにしておいたが、成長は遅い。
 収穫できぬまま春になり、気付けば黄色い小さな花がたくさん咲き始めていた。
 小松菜の花言葉は「小さな幸せ」。
 収穫はできなかったけれど、きれいな花畑ができて、それはそれで幸せになった。

<評> 思わぬ失敗や手違い、勘違いまで、作業のすべてを、まとめて楽しめるのが家庭菜園の魅力。元気いっぱいの種蒔きで、小松菜のもうひとつの花言葉「快活な愛」にぴったりの花園が出現しました。

[漁夫の利] 千葉県船橋市・会社員・26歳 杉本誠 

 「やっぱり、たい焼きは頭から食べるのが良いよな」
 「あり得ない。絶対尻尾からよ」
 「頭にぎっしり詰まったあんこを、一口目にパクッとするのが最高じゃないか」
 「まず焼きたての尻尾を味わうのが通の食べ方よ。それに、いきなり頭を食べるなんて野暮(やぼ)よ」
 「はんっ! 尻尾からチマチマ食べるところがウジウジした姉ちゃんらしいぜ」
 「なによ! 頭からがっつくところに、あんたのガサツな性格が表れてるわよね」
 お皿に乗る一匹のたい焼きを前に、姉と弟がいがみ合いだした時、お腹(なか)をさすりながら父がリビングに現れた。
 「お! 美味(うま)そうなもんがあるな」
 そう言うと、父は豪快に、お腹からむしゃむしゃとたい焼きを頬張った。

<評> どこから食べ始めるかで、その人の性格が分かるといいます。この場面は父親の勝ちに思えますが、さらに、もう一人が加わったら…「お皿の上の私のおやつ、誰か食べたんじゃないでしょうね!」


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