「南総里見八犬伝」作者 古希の馬琴とみられる肖像画 館山市立博物館が館山城内で展示

2021年4月19日 07時07分

南総里見八犬伝に関する資料をそろえた展示会場=館山城で

 館山市立博物館は、江戸時代の長編小説「南総里見八犬伝」の作者・曲亭馬琴(きょくていばきん)(一七六七〜一八四八年)とみられる肖像画を、分館の館山城内で展示している。東京都内の古書店から購入した掛け軸に描かれたもので、八犬伝執筆のさなか、七十歳の古希を祝った作品と推定される。老いの心境を詠んだ和歌も記されており、安房地域ゆかりの文豪の面影を伝える資料と言えそうだ。 (山田雄一郎)
 博物館によると、掛け軸の購入は二〇一九年三月。同館に届いた古書目録で東京都小金井市の書店が売りに出していることが分かったのがきっかけだった。これまでも八犬伝に関する資料を収集し、その数は約千点に上るが、馬琴の肖像画と呼べるものは所蔵していなかった。
 桐(きり)箱に入っていた掛け軸は縦一七三センチ、横四五・五センチで、肖像画の部分は縦八八センチ、横二八センチ。本箱にもたれかかって読書する羽織姿の馬琴像で、かたわらに短刀が置かれている。外題に「三宅東岡画」という画家名があるが、素性は不明。一八三六(天保七)年ごろの作品とみられる。
 肖像画には「くちもせぬ 身さへとしさへ たとふれば あだしや名のみ 高砂のまつ」の和歌が記され、歌題の「古稀自祝題詠 曲亭馬琴」には「古稀」の文字が見える。
 和歌の意味について、博物館主任学芸員の宮坂新さんは「年を取ってみんなが祝ってくれるが、素晴らしいものではない。ただ年を取っているだけだ、という意味ではないか」と解説する。馬琴の諧謔(かいぎゃく)性がうかがえて興味深い。
 七十歳のころの馬琴は息子を亡くし、残された孫の行く末を案じ、金銭的に苦労したことで知られる。書を販売して生計を立て、この時期に量産した書が古書界に出回っており、購入した肖像画もその一つに当たる可能性があるという。
 ただ、今回の肖像画はまげのようなものを結い、広く知られた頭髪のない馬琴像とは異なる。専門家の鑑定を受けていないため、本物の肖像画かどうか、現時点では断定できないのが実情だ。和歌や落款はほぼ確実に馬琴のものといい、肖像画の真偽は今後の研究課題といえる。
 午前九時〜午後四時四十五分。月曜休館(祝日は開館し、翌日休館)。大人四百円、小中高生二百円(博物館本館と共通)。問い合わせは、博物館=電0470(23)5212=へ。
<南総里見八犬伝> 曲亭馬琴が後半生を傾けて完成した日本文学史上最大の長編小説。全部で106冊からなり、1814(文化11)年から28年かけ42(天保13)年に脱稿した。房総の戦国大名・里見氏の危機を救うため、8人の若者(八犬士)の活躍を描く伝奇物語。映画やテレビドラマ、漫画としても取り上げられてきた。

掛け軸に描かれた曲亭馬琴とみられる肖像画(館山市立博物館提供)


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