東京五輪中止なら前払い金は返金? 不安募るホテル、組織委「仮定の話の答え控える」

2021年4月20日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染者増は、変異株の広がりもあって歯止めがかからない。自民党幹部からは、感染状況次第で東京五輪・パラリンピックの中止も選択肢になるとの発言もあった。コロナ禍で長引く宿泊客減に苦しみながら、今夏の五輪で大会関係者の宿泊を見込む東京都内のホテル経営者は「大会が感染拡大につながっては元も子もない。果たして開催できるのか」と不安を隠さない。(梅野光春)

◆五輪関係者の宿泊、苦悩の種に

 「栄誉になると思って、宿泊を引き受けたが…」
 東京・人形町のホテル「住庄ほてる」(中央区)社長の角田隆さん(52)の表情は暗い。大会組織委員会との契約で、五輪期間中に全83室のうち約30室に海外からの大会関係者が宿泊する予定となっている。

コロナ禍での厳しい状況について話す「住庄ほてる」社長の角田隆さん=1月20日、東京都中央区で

 「料金は、東日本大震災後で観光需要が冷え込んだ2012年を基準にした低めの設定。それでも、五輪に関われるありがたみがあった」と角田さん。だが昨年、大会が延期されてからは、組織委に対して不信感を募らせてきた。

◆「組織委は開催前提の話だけ」

 というのは、角田さんの会社は19年10月と今年3月の2度にわたり30%ずつ、計60%分の宿泊料金の前払いを組織委から受けており、今後、大会中止や縮小によりホテルが利用されなかった場合、組織委から前払い金の返還を求められるのではと危惧するからだ。
 コロナ禍で宿泊客が激減しており、受け取った前払い金は、運転資金に使わざるを得ない。角田さんは「資金は、喉から手が出るほど欲しい。でも中止になって『返金して』となると困る。だから中止の際の扱いを組織委に問い合わせたが、開催が前提の話だけで、具体的な回答がない」と話す。
 組織委は本紙の取材に「400を超える宿泊施設と契約を進めているが、個別の調整状況は公表していない。今夏の大会開催に注力しており、(大会の中止や規模の縮小など)仮定の話には答えを差し控える」とする。

◆「人の役に」と無料キャンペーンしたが…

住庄ほてる

 この1年余り、角田さんはコロナ禍に振り回されっぱなしだ。昨年3月に宿泊客が目に見えて減り、同月末に五輪・パラの延期が決定。同年7月からの観光支援事業「Go To トラベル」では当初、東京は除外された。そこで「人の役に立てば」と同8月いっぱい、無料宿泊キャンペーンを実施すると約300人が利用。「そのお礼に」と年末年始に複数の予約が入ったが、第3波の感染拡大で昨年11月下旬以降、キャンセルが相次いだ。
 東京で2度目の緊急事態宣言が解除された先月下旬以降、大型連休の予約が少しずつ入ったが、最近の感染再拡大や小池百合子都知事の「東京に来ないで」発言などで、またもキャンセルが始まった。
 角田さんは「感染がずるずる広がらないように」と耐える覚悟だ。だが大会については「東京はコロナ禍が落ち着いた、とPRする契機になればいいが、本当に開催できるのか」と半信半疑でいる。

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