<社説>米アフガン撤兵 和平実現に国際連携を

2021年4月20日 07時58分
 バイデン米大統領がアフガニスタン駐留の米軍を九月十一日までに撤退させると表明した。米軍撤退で生じる「力の空白」が内戦を激化させぬよう、イスラム諸国を中心に国際連携を強めるべきだ。
 米軍とともに北大西洋条約機構(NATO)も撤収を決め、約一万人の外国軍がアフガンを去る。
 米国は二〇〇一年九月の米中枢同時テロを契機にアフガンに派兵した。バイデン政権は事件から二十年の節目を撤退期限とした。
 この派兵は米国史上「最長の戦い」で、約二千四百人の兵士の犠牲と総額二兆ドル(二百十六兆円)以上を投じた。だが、国内では「忘れられた戦争」と化している。
 トランプ前政権は昨年二月、アフガンの反政府勢力タリバンと今年五月一日までの撤兵で合意。今回の表明は四カ月余の撤兵延期ともいえる。この期間延長にバイデン政権の「苦渋」が透ける。
 アフガン政府軍は米軍の空軍力に支えられており、撤兵はタリバンの攻勢を招きかねない。だが、撤兵はアフガン政府とタリバンの和平交渉の土台で、合意をほごにすれば和平交渉が崩れる。延長期間に和平の枠組みを確立させ、駐留の泥沼から抜け出す。この綱渡りがバイデン政権の戦略だろう。
 しかし、楽観はできない。「国際テロの温床」という危険は減じた。国際テロ組織アルカイダは弱体化し、過激派「イスラム国」の抑制にはタリバンも動いている。
 だが、和平には課題が多い。将来の統治システム一つとっても、現在の政府とイスラム統治に厳格なタリバンでは開きが大きい。
 ただ、望みはある。それはタリバンの変化だ。一九九六年から五年間、タリバンが統治した「アフガニスタン・イスラム首長国」はサウジアラビアなど三カ国にしか認められず、孤立を招いた。タリバンは現在、不十分ながら女子教育にも力を入れている。国際的な承認を意識しているためだ。
 西欧的な価値観を押しつけることは難しい。そこでタリバンに影響力を持つパキスタンや政治事務所を置くカタール、二十四日からの和平会合を準備するトルコなど、米国とパイプのあるイスラム諸国の役割が重要になる。こうした国々を通じた外交圧力で内戦の激化を避けるべきだ。
 歴史的にも英国、ロシア、米国と軍事に頼る介入は功を奏しなかった。イスラム諸国のみならず、周辺国の中国やインド、イランも和平に向けて結束すべきだ。

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