<新型コロナ>バイデン政権の15万円の現金給付、ホームレスに届かず…支援策が格差を生む皮肉

2021年4月20日 09時45分

7日、米ワシントンの公園で、現金給付について「知らない」と語るキャロッブさん

 米国のバイデン大統領は新型コロナウイルスによる経済的な打撃を緩和するため、3月から1人当たり最大1400ドル(約15万円)の現金給付を始めた。だが、路上生活者(ホームレス)は受給資格があっても受け取れない状況が続いている。一定の所得層は昨年の計1800ドルの現金給付も含め総額3200ドルを手にする一方で、資金を最も必要とする人に届かず、格差が生まれている。(ワシントン・吉田通夫)

◆「どうやって受け取るんだ?」

 給付の実務を担う内国歳入庁(IRS)は14日時点で、給付金を3760億ドル(約41兆円)分支払ったと発表した。予算は4140億ドルなので、法案が成立した3月11日から1カ月ほどで9割を支給し終えた計算だ。日本政府が全国民に10万円を配った特別定額給付金に比べてかなり早いが、ホームレスたちは迅速対応から取り残されている。
 「給付金?どうやって受け取るんだ?」。ワシントン市内の公園で寝泊まりしているキャロッブさん(60)は、現金支給の存在を知らなかった。トランプ政権時の昨年の2回の現金給付も、やはり知らずに受け取らなかったという。

8日、米ワシントンで、道路脇に並ぶホームレスたちのテント

 米国民なら、だれでも受け取る権利はある。ただし、政府は前年の確定申告や銀行口座の情報を基に支給するため、納税履歴も銀行口座もないホームレスは、確定申告会場に出向いて申し込まなければならない。受け取るために必要な手続きは新聞やネットに載っているが、多くのホームレスには情報が届いていない。
 受給要件も伝わっていない。元建設作業員のキャロッブさんは失業者への支援策を受けているといい、「給付金を受け取ったら、ほかの支援策を受けられなくなるだろう。だったら受け取らない方がいい」と話した。実際には、高所得者向けの所得制限のほかに原則として条件はない。

◆コロナ禍、支援団体の説明も限界

 ホームレスの支援団体も説明に回っているが、限界がある。同じ公園でベンチに座り込んでいたエリックさん(54)は「支援団体が運営する保護施設で新型コロナの感染者がたくさん出たって聞いたから、そういう連中には近づかないようにしているんだ」と険しい表情で語った。
 ホームレスの間で現金給付が話題になることもない。「現金を受け取ったって言ったら、襲われるかもしれないからな」
 米調査機関アーバン・インスティテュートのシャンテル・ボイエン氏は「政府もホームレス向けに情報提供する専用のホームページをつくるなどいろいろと試みているが、ホームレスはネットに触れないし、非常に難しい」と説明。「政府や地域のホームレス支援団体などが、給付金の受け取り方法や受給要件について地道に広めていくしかない」と語る。

◆バブルを招くすリスク指摘も

 現金を必要とする層になかなか届かない一方、すでに2回の給付金を受け取った層を中心に、過去最高額の現金が届く。ワクチン接種が進み、景気の回復が鮮明となる中での大型給付金に、大和総研ニューヨークリサーチセンターの矢作大祐研究員は「貯蓄に回って実際の経済活動への影響が小さくなる一方、株などへの投資に流れ込んで投機が過熱するバブル経済の副作用が懸念される」と指摘する。
 格差の是正を掲げるバイデン氏の目玉政策である現金給付が、皮肉にも格差を広げ、バブルを生み出すリスクに直面している。

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