<社説>香港の制度改悪 もはや「選挙」ではない

2021年4月21日 07時51分
 民主派を実質的に香港政治から締め出す選挙制度改変が、五月中にも香港立法会で成立する見通しだ。「愛国者」以外は立候補できないという新制度の狙いは、香港の民意封殺とみるほかない。
 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は先月三十日に改変案を可決した。これを受け香港立法会(議会)は十四日、関連する条例案の審議を始めたが、親中派が多数を占める立法会の審議は、全人代の結論を追認する内容になるとみられる。
 香港では、立法会選挙が十二月にある。五年ごとに香港トップの行政長官を決める選挙も来年三月に迫っている。大急ぎでの審議強行は、香港の政治舞台から民主派を駆逐するための制度改変を、重要な二つの選挙に間に合わせるためだろう。
 現に、全人代での可決後に栗戦書常務委員長は「この制度は愛国者による香港統治という原則を実行に移すものだ」と述べている。
 改変後は候補者の「資格審査委員会」が新設される。行政長官も立法会議員も「愛国者」と認定された人しか立候補できない。これは、実際には中国共産党の支配を受け入れる人しか選挙の舞台に立てないことを意味する。まさに「政治審査」であり、これでは選挙の名には値しない。
 立法会選挙はこれまで、親中派が多い業界別に選挙する枠と、住民の直接選挙の枠で定数の半分ずつを選んできた。改変後は民主派に有利だった直接選挙枠が大幅に減らされる。
 さらに、選挙の棄権や白票を投じるよう呼び掛ける活動を違法とし、最高三年の禁錮刑を科すことも条例案に盛り込まれた。棄権や白票で不信任や抗議の意思を表明する自由すら奪うものである。
 中国は昨年施行の香港国家安全維持法で民主派の抗議行動を抑え込んだ。選挙制度改変はそれに続く香港の民意封殺の総仕上げといえる。香港の憲法に当たる「基本法」は将来の普通選挙導入を目標に掲げるのに、中国は、香港と一党独裁の大陸の一体化という逆コースを推し進めている。
 また、中国に批判的な香港紙・リンゴ日報創業者の黎智英(れいちえい)氏に十六日、二つの抗議デモで違法集会を組織した罪などで禁錮一年と同八月の実刑判決が言い渡された。
 弾圧法制、選挙制度改悪、言論統制などあらゆる手段で香港の自由を奪おうとする中国に対し、国際社会は抗議の声を絶やさず、方針の修正を迫り続けるべきだ。

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