<社説>新卒採用減少 コロナ氷河期は回避を

2021年4月21日 07時51分
 企業が新卒採用を抑制する姿勢を強めている。コロナ禍による先行き不安の広がりが直接の原因だ。ただ採用を増やす企業もあり、産業全体として採用数を減らさない柔軟な取り組みを求めたい。
 共同通信が主要百十社を対象に実施した調査では、二〇二二年度入社について採用数を前年度より「減らす」と回答した企業は全体の22%で、「増やす」の17%を上回った。前年度も半数近くが実際の採用を減らしており、抑制傾向は続くとみていいだろう。
 心配なのはコロナ禍の直撃を受けた観光関連や飲食、運輸だけでなく素材やエネルギーなど採用減が多業種に広がっている点だ。多くの経営者の心理が一段と冷え込み、採用の抑制につながっている現状が裏付けられている。
 採用減少は中小企業にも影響を与えている。厚生労働省が先月発表した労働経済動向調査によると、今年春に高卒、大卒の新入社員を採るとした企業(従業員三十人以上)は全体の約40%にとどまり、前年から10ポイント程度落ちた。
 規模の大小を問わず企業の採用意欲は確実に落ちており、先の見えない深刻な状況といえる。
 一方で業績を伸ばしている企業もある。巣ごもり需要による効果で家電の売れ行きがいい電機産業や流通、IT関連などの中には業績が好転している企業がかなりある。余裕のある企業は中途も含めより積極的に採用数を増やしてほしい。
 就職する学生側にも変化が必要だ。コロナ禍直前まで多くの中小企業は人材不足に悩んでいた。国内には世界的な競争力を持つ将来性の高い中小企業も少なくない。こうした企業が依然、人材を求めているケースは多い。大企業にこだわらずやりがいや将来性を見据えた就職活動をしてはどうか。
 国や各自治体は、主に中小を対象に採用者と就職希望者とが簡便に素早く接触できる場の設定をさらに進めるべきだ。
 就職をめぐっては、足元の景気動向に動揺した一部経営者の短慮により、氷河期世代を生み出した苦い経験がある。特定の世代が雇用のしわ寄せを受けることで大きな不公平感が残った。
 緊急事態宣言が再び現実味を帯びている中、経営上の苦境は理解できる。
 しかし採用は若者の未来を担保する責任の重い企業行動である。経営者には「コロナ氷河期」の回避を強く意識した公共性の高い採用計画の実行を期待したい。

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