政策減税の「恩恵」、自民党献金の多い業種ほど手厚く 本紙調査で判明  

2021年4月21日 18時15分
 研究開発費を使った企業などの法人税を優遇する「租税特別措置」(租特)の恩恵が、自動車や電機など一部製造業に偏っていることが本紙の集計で分かった。減税額が大きい業界ほど自民党への献金額が多い傾向も判明。献金の「効果」の大きさが浮き彫りになった。3月に関連法が成立し、大半の租特は2021年度も延長される。特定の業種に減税の恩恵が集中する状況が今後も続きそうだ。(大島宏一郎)
 本紙は租特に関する財務省の資料を分析。租特のうち本来の納税額から一定額を差し引ける「税額控除」分を抽出し、35業種別の減税額を集計した。

 ◆政権復帰後 計6.8兆円

 その結果、自民党が政権復帰後の13年度以降、19年度までの租特による「政策減税」の減税額は計6・8兆円に上ったことが分かった。業界別では、自動車など「輸送用機械器具製造業」が1兆4000億円で首位。これに8700億円の「化学工業」、5300億円の「電気機械器具製造業」が続いた。
 一方、自民党の政治献金の受け皿団体「国民政治協会」への業界別献金額(2000万円超の大口献金のみの合計)をみると、献金が多い業界ほど、租特による減税の恩恵を受けている傾向が浮かび上がる。
 13~19年の献金額首位は、日本自動車工業会(自工会)や自動車メーカーなどの「輸送用機器」で計17・3億円。13~19年度の減税額も輸送用機器が首位で、献金の影響力の大きさが表れる形となった。計12・8億円を寄付した献金額2位の「電気機器」も、減税額は3位と多かった。
 減税額と献金額の関係について自工会は「政治資金規正法にのっとって適切に行った」とコメント。
 ただ、民主党政権で09年9月から約1年間、財務副大臣を務めた峰崎直樹氏は「自公政権になってから一部製造業の意向を背景に減税策が拡充された」と指摘。経済産業省元官僚の古賀茂明氏は「税制改正は業界の要望を基に決まる。献金が多い業種の意向が反映されやすい」と話した。

 ◆恩恵小さいサービス業

 確かに献金が多く減税の恩恵が大きい製造業に比べ、非製造業の献金額は少なく減税額も小さい。
 本紙の法人企業統計の分析では、13~19年度の業界別利益(税引き前)の首位は約80兆円の「サービス」だった。サービスは飲食、宿泊、福祉、医療、広告などで、その利益は約36兆円の自動車業界の2倍超に上った。一方、サービスに属する企業の大口献金はゼロで、租特による減税額は自動車など(約1・4兆円)の半分以下の約5000億円にとどまった。
 近年はサービスなど非製造業の経済規模が拡大し、業種別の国内総生産(GDP)はサービスなどを含む第3次産業が約7割を占める。だがサービスは従業員の給料を引き上げた場合に適用される「賃上げ減税」などは使えるものの、租特全体の6割を占める「研究開発減税」は活用しにくい。

 ◆専門家「産業構造の変化への対応、不可欠」

 租特について日本総研の立岡健二郎氏は「産業構造の変化への対応が不可欠だ」と強調。その上で「人材投資に関する減税措置を充実させるなどソフト面にも適用すれば、幅広い業種が使え、新しい産業が育つきっかけにもなる」と指摘した。
 財務省元官僚で東京財団政策研究所の森信茂樹氏も「産業振興の観点から業種間の偏りを見直してほしい」と話した。

 租税特別措置 経済の活性化を目的に国が設ける法人税の優遇措置。時限立法が原則だが、延長を繰り返す項目が多い。研究開発に使った費用の一部を法人税から差し引ける研究開発減税は1967年度の創設で、半世紀超続いている。2020年度末に期限を迎えた29項目では26項目が延長され、廃止は3項目にとどまった。21年度からは「デジタル化」や「脱炭素化」に向けた投資を促す措置など5項目が新設された。

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