<社説>元慰安婦訴訟 判決生かした救済を

2021年4月22日 08時10分
 元慰安婦の女性らが日本政府に賠償を求めた裁判で、原告の訴えが却下された。司法による解決には限界がある。日韓両国は判決の趣旨を受け止め、被害者救済に必要な行動を取ってほしい。
 判決の焦点は、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の扱いだった。
 一月に同じソウル中央地裁で出された同様の判決では、「日本の不法行為に主権免除は適用できない」として日本政府に賠償金の支払いを命じ、波紋を広げた。
 今回は、主権免除を認める正反対の結果となった。特に二〇一五年に日韓間で交わされた慰安婦をめぐる合意を有効と認め、問題解決に向け、韓国政府の努力を促している。日本政府の立場に沿う内容といえる。
 ただ、これで対立が収まると考えるのは早計だ。原告らは控訴の意向を示しており、裁判はさらに続く可能性があるからだ。
 慰安婦問題は、紛争下で起きた女性への暴力の一つであり、国際的な関心も高い。
 日本は女性政策での立ち遅れが指摘されている。国会議員に占める女性議員の割合が、先進国で最低水準なのがその一例だ。
 日本政府は一九六五年の日韓国交正常化時の協定や一五年の合意で、問題は解決済みとしている。
 努力を重ねたとはいえ、この機会に、あらためて彼女らの声に耳を傾け、対立を和らげる方策を探ってほしい。
 今回の裁判に限らず、日韓間には難題が多い。韓国は東京電力福島第一原発から出る処理水の海洋放出に反発している。
 日本企業に賠償を命じた徴用工訴訟についても、日韓の溝は埋まらない。これ以上の関係悪化は、双方にとって利益にならない。
 司法を通じた解決には、多くのハードルがあるのが現実だ。
 確定した一月の判決に従って日本政府の資産を差し押さえることは、「国際法違反になる」として韓国の裁判所が認めなかった。日本政府は裁判を無効とし、賠償にも応じない姿勢だ。
 一方で原告の高齢化は進んでおり、時間はあまりない。揺れ動いている司法判断に解決を委ねるより、日韓両政府の協議を促し、政治主導によって救済策をまとめさせる方が現実的ではないか。
 文在寅(ムンジェイン)大統領は一月の判決が出た後、被害者中心主義で外交解決を目指す考えを示した。具体的な提案がまだ見えていないが、今こそ指導力を発揮してほしい。

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