幕張少年マサイ族

椎名誠

1,540円(本体価格1,400円)
四六判変形 並製 244ページ
9784808310578

シーナ少年が「草原」を飛び回ったあの頃


東京・三軒茶屋から千葉に越してきて「初めて海を見た」5歳ごろから、多感な中学時代までの心に残る出来事を綴った、「数多い作品の中でもお気に入り」と話す椎名誠氏の自伝エッセイ。
昭和30年代、「黄金の遊び場」だった幕張の海辺での椎名少年の思い出とともに、大規模開発で変わっていく幕張への哀惜、当時の風俗も詳しく描かれている。
海の家に忍び込んだ話、川をへだてた石投げ合戦、草原での決闘……。
昭和の少年たちの心をくすぐる、ノスタルジィあふれる子ども時代(本人曰く「海ガキ」の頃)のエピソードを、椎名誠ならではの視点と筆致で読ませる。
椎名作品には欠かせない、人気イラストレーターの沢野ひとし氏がカバー画など計22点を描きおろした。同じ時代を同じ場所で過ごしたからこそわかる「あの頃の風景」を描いている。

あの頃ぼくたちも
浜番みたいにみんな竹の棒を持っていた。
後年、作家の取材仕事でアフリカに行ったとき、
ケニアやタンザニアなどでマサイ族をよく見た。
かれらは背が高く鋭い目をして
みんな長い槍を持っていた。
それは少年の頃に常に恐怖のマトでもあった
海の浜番の記憶にすぐにつながっていった。
あの頃、ぼくたちは恐れていたけれど、
けっこう浜番に憧れていたのだと思う。
だからぼくたちも浜番のまねをして
みんな長い竹竿を持つようになっていたのだ。
              (本文「潮風の朝」より)