新緑で活力を 町田・小野路〜小山田 密避け多摩ハイク

2021年4月23日 07時07分

山に囲まれた昔ながらの「谷戸」の風景=いずれも町田市で

 コロナ禍で遠出は控えたいという人も多いのではないだろうか。ゴールデンウイークは都心に近く自然に恵まれた多摩地区で、「密」を避けながら日帰りハイキングを楽しんでみてはどうだろう。日野市在住で「多摩歩き」の達人、重信秀年さん(60)とお薦めコースの一つを歩いてみた。
 紹介してもらったのは、町田市小野路町の小野路宿里山交流館から、同市下小山田町の大泉寺までの約四キロ。多摩ニュータウンと町田市中心部の中間付近にある。開発の波にのみ込まれずに残る田畑や雑木林もあり、「隠れ里」の風情を残す。

新緑の雑木林

 出発点の交流館周辺は江戸時代に「小野路宿」としてにぎわった。交流館は、かつての旅籠(はたご)「角屋」を改修・再整備したものだ。採れたての野菜や土産物も売っている。「今回のコースは、小さい子のいる家族でも安心です。二時間十分ほどで回れますよ」
 交流館を出て間もなく、「コロコロ」とカエルの鳴き声が聞こえ、丘陵と丘陵に挟まれた「谷戸」と呼ばれる平地部に田園風景が広がってきた。
 「ようこそ、いらっしゃい」。クワを抱えた八十九歳のおばあちゃんから声を掛けられた。「お邪魔します」。タケノコ泥棒と出くわした話や戦時中の話にまで広がり、気付けば三十分。こうした地元の人たちとの交流も、「多摩ハイク」の楽しみの一つだという。

農家のおばあちゃんと会話を弾ませる重信さん(左)

 谷戸を囲む尾根沿いに雑木林の小道を進む。新緑が目に優しく、ホトトギスの鳴き声も心地よい。「梅雨入りまでは柔らかい緑の風景を楽しめます。夏になると、濃い緑とせみ時雨の中を歩くことになります」
 小野路城跡の近くには、小野小町が目の病を治したとされる「小町井戸」と呼ばれる湧き水もある。湧き水は平安末期の歌人西行ゆかりの「仙人水」とも呼ばれる。里山歩きは「歴史散歩」でもあるのだ。
 コースを進むと、何カ所か分かれ道が現れる。迷わずに道を選ぶ重信さん。よく、迷わないですね−。「何度歩いても迷うことがありますよ。でも、どこを進んでも大通りに出られるから、遭難はしません」
 地域の住民が保存活動を続ける「奈良ばい谷戸」を抜けて、都立小山田緑地へ。「小山田の谷」と呼ばれる雑木林が姿を現す。木道に沿って園内を進むと、しゃがみ込んでイチリンソウの写真を撮影している男性がいた。「何を撮っているんですか」と興味津々の重信さん。初対面の二人による即興の撮影会が始まった。写真を撮り終えた重信さんは「ここは何度も来ていますが、来る度に新しい発見がありますね」とうれしそうだった。
 運動広場を抜けると、コースで最も絶景を楽しめる「みはらし広場」に。晴れていれば、遠く西の方角に丹沢の山並みと富士山を一望できるという。この日は富士山は雲に隠れていたが、家族や仲間同士でベンチに腰を掛けて昼食を楽しむ人たちの姿も見られた。
 道中のおしゃべりも含めて約二時間。新興住宅地のすぐ脇で地域を見守ってきた大泉寺で、今回の多摩ハイクは終了した。多摩ニュータウンに隣接する一方、かつての城跡近くの谷戸では昔ながらの農業が続く小野路、小山田地区。歴史を行ったり来たりするような不思議な里山歩きだった。
 「史跡がたくさん残る京都や奈良と違って、歩いていると時折、歴史の面影が顔を見せてくれるのが多摩」と重信さん。自然を楽しむだけではないのも「多摩ハイク」の魅力だ。
 重信さんが今回のコースを含めた30コースを紹介する「多摩奥多摩ベストハイク30コース」が発売中。1540円。問い合わせは東京新聞出版・エンタテインメント事業部03(6910)2527。
 文と写真・布施谷航
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