歌舞伎座「五月大歌舞伎」 尾上菊五郎「仮名手本忠臣蔵」で勘平 難役「音羽屋型」で伝承

2021年4月23日 07時38分

「仮名手本忠臣蔵」の早野勘平について語る尾上菊五郎=東京都中央区で

 東京・歌舞伎座の「五月大歌舞伎」第2部で、尾上菊五郎(78)が歌舞伎の三大名作の一つ「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」に出演する。例年5月は、市川團十郎家、尾上菊五郎家ゆかりの演目が並ぶ「團菊祭」だが、コロナ禍で今年は「五月大歌舞伎」としての興行。菊五郎は「(團菊祭が)できないのは残念ですが、皆で力を合わせて(興行を)成功させたい」と舞台への意欲を語った。 (山岸利行)
 「忠臣蔵」は赤穂浪士の討ち入りを題材にさまざまな人間模様を描く人気演目。菊五郎は「六段目 与市兵衛内勘平腹切(よいちべえうちかんぺいはらきり)の場」で、早野勘平を演じる。しゅうとを誤って撃ち殺したと思い自害するが、そこに至るまでの人としての複雑な感情表現などが求められる。
 勘平を何度も演じてきた菊五郎は「難役中の難役」と話す。「切腹するのでお腹(なか)までおしろいを塗るほか、かつらや血のり、手拭い、煙管(きせる)の扱いなど、やることが多く、気が抜けない」と明かす。演じ始めたころは「やることが多いので、頭の中がこんがらがって神経が参った」とも。腹を切った後のせりふの言い回しなども難しいとされるが、「やりがいのある役」だという。役の型について当代(七代目)は「五代目、六代目が作った『音羽屋型』で行こうと思っています」と伝統を受け継いでいく覚悟を示した。
 「五月大歌舞伎」には、別の演目で長男の尾上菊之助(43)、孫の尾上丑之助(うしのすけ)(7つ)、寺嶋眞秀(まほろ)(8つ)も出演予定で、現在稽古中。ファミリーの出演に顔をほころばせる。
 コロナ禍が一年を超え、収束の兆しも見えない中、出演者の感染防止対策も欠かせないが、菊五郎は感染した場合の影響の大きさを考え、「この一年で外食したのは一回か二回。ずっと家に引きこもっています」と明かす。
 また、同じ「五月大歌舞伎」に出演予定で、三月二十八日に体調不良で救急搬送された中村吉右衛門(76)は菊之助の義父でもあり、同じ人間国宝同士。病名が分からないことを気にしながらも「ただただ元気になって戻ってきてくれるのを待っています」と話した。

「仮名手本忠臣蔵 六段目」で早野勘平を演じる尾上菊五郎(c)松竹

◆五月大歌舞伎

 ◇第一部(午前十一時開演)「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ) 大川端庚申塚(こうしんづか)の場」(尾上右近、中村隼人、坂東巳之助ら)、「土蜘(つちぐも)」(尾上松緑、市川猿之助ら)
 ◇第二部(午後二時三十分開演)「仮名手本忠臣蔵 道行(みちゆき)旅路の花聟(はなむこ)」(中村錦之助ら)、「仮名手本忠臣蔵 六段目 与市兵衛内勘平腹切の場」(菊五郎、中村時蔵ら)
 ◇第三部(午後六時二十分開演)「八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう) 湖水御座船」(吉右衛門ら)、「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」(菊之助ら)
 公演は五月三〜二十八日(十、十九日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000・489。
 【仮名手本忠臣蔵】元禄14(1701)年、江戸城松の廊下で吉良上野介(きらこうずけのすけ)に斬りかかった罪で浅野内匠頭(たくみのかみ)は切腹。その後、大石内蔵助(くらのすけ)ら赤穂浪士は主君・浅野の恨みを晴らそうと吉良邸に討ち入り、思いを果たす。この史実を基にしているが、時代設定のほか、登場人物も、浅野は塩冶(えんや)判官、大石内蔵助は大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)などに変更されている。早野勘平は塩冶家の家臣。敵討ちの物語として、人形浄瑠璃、歌舞伎などで上演されている人気演目。初演は寛延元(1748)年。全11段。

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