川崎市独自の個人情報保護条例 「デジタル改革関連法案」で後退する恐れ 思想信条や病歴、収集の「原則禁止」明記せず

2021年4月23日 07時38分

個人情報に関する市民の相談も月に2回受け付けている窓口=川崎市役所で

 国会で審議中の「デジタル改革関連法案」に含まれる個人情報保護法の改正案をめぐり、国より厳しい規制で住民の権利を守っている自治体独自の個人情報保護条例が「後退」する恐れが指摘されている。一九八五年に全国に先駆けてつくられた川崎市の条例も例外ではない。専門家からは、十分な審議がないままに重大なルール変更が進むことを懸念する声も上がっている。 (中山洋子)
 菅義偉首相肝いりの「デジタル庁」創設を目玉とするデジタル改革関連法案は、六十三本もの新法や改正案をたばねて一括で審議されている。わずか二十七時間半の審議で衆院を通過、十四日から参院で審議が始まっている。
 とりわけ全国の自治体が注視しているのが、民間、行政機関、独立行政法人の三つの個人情報保護法を一本化する改正法案の行方だ。住民のプライバシー権を守る個人情報保護条例を国に先んじてつくってきた自治体は多い。だが、改正法案の規制対象に「地方自治体」が含まれており、これらの条例が事実上効力を失うとみられている。
 例えば、国のルールに合わせて「規制緩和」が心配されている一つに、人種や思想信条、病歴などの「要配慮個人情報」の扱いがある。総務省のまとめによると、九割以上の都道府県や市町村が要配慮個人情報を規制。川崎市でも、差別や偏見を招かないため「要配慮個人情報」の収集は「原則禁止」と明記。取り扱う場合も審議会の意見を聞くことなどを定めている。
 だが、改正法案は収集の「原則禁止」を明記していない。
 実際、法改正の行方を心配する自治体は多い。
 川崎市も昨年十一月の全国市長会や内閣官房の意見聴取などで、この「要配慮個人情報」の扱いも含め、改正法案へのさまざまな疑問や懸念を示してきたという。市の担当者は「自治体にも独自の措置が認められることになっているが、どこまでの範囲になるのか」と国会審議を見守る。
 自治体の個人情報保護制度に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「匿名加工した個人情報の利活用は政府の成長戦略に組み込まれ、法改正は個人情報を民間のビジネスにも利用しやすくすることを目的としている。その目的から考えると、条例ごとにバラバラでは使い勝手が悪く、審議会などの個別のチェックは『不要』とされている」と指摘し、独自措置の余地はきわめて限定的になるとみる。「個人情報を利用する必要があるにしても、透明性のある議論は不可欠。個人の権利をどう守るかを見えるところで議論し、丁寧に仕組みの中に組み込むべきだ」と議論不足を危ぶんだ。
<川崎市個人情報保護条例> 住民票などの情報は個人が管理できるという「自己情報コントロール権」の考え方に基づき、1985年6月に政令市で初めてつくられた個人情報保護条例。86年1月施行。間違った内容や目的外に利用された情報は訂正や削除などを請求できる。民間業者や役所によるプライバシー権の侵害を勧告する個人情報保護委員も設置、市民の相談を受け付けている。

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