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【東京エンタメ堂書店】

高齢期を楽に生きるヒント 樋口裕一さん本紙連載、一冊に

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 高齢期をいかに楽しく幸せに生きるか。そんな問いを出発点に、『頭がいい人、悪い人の話し方』のベストセラーで知られる多摩大(東京)名誉教授の樋口裕一さんが本紙につづったエッセーが『65歳 何もしない勇気』(幻冬舎)と題して本になった。現代人の多くが無意識に縛られている「進歩主義」からの解放などを説き、「気楽に生きるヒントになる」と反響を呼んでいる。 (岩岡千景)

 樋口さんは、参考書などを多く執筆する受験小論文指導の第一人者。一般書も百冊以上出し、二〇〇四年刊行の『頭がいい人−』は発行二百五十万部超を記録した。クラシック音楽にも造詣が深く、昨年定年退職するまで、多摩大でコンサートの企画運営法などを指導してきた。

 今年で六十七歳になる樋口さんが、両親や周囲の人々を見て感じたのは、高齢になっても「〇〇しなくてはいけない」という観念にとらわれ、気苦労やストレスを自ら増やしている人が多いこと。そこで今年一〜三月に本紙文化面に連載した「65歳になったら…〇〇しなくていい宣言!」では、高齢期の幸せな生き方を考察しつつ「しなくていい」と思えることを列挙。「心の断捨離」を説いた。

◆「進歩しなくていい」 努力は自分苦しめる

 「『進歩しなくていい』と書いたことに『非常に驚いた』という声が多かったですね」。先月発売された本を手に、樋口さんは語った。人類や社会が時を追って前進し完全に近づくとする「進歩主義」は、個人の生活にも浸透。私たちには今日より明日は進歩すべきだという感覚が染み付いている。このため高齢になって習い事をしても上達しない自分を悲しみがちだが、進歩主義を捨て「その時々を味わえばよい」などと説いた。

 努力や頑張りも「壮年期までの美徳」で「そもそも『努力する』とは、現在の自分を否定して、より高い目標に自分を追いやること」「見方を変えれば自分をいじめること」と発想の転換を促す。また「完璧主義」についても、周囲を巻き込み、自分も苦しめるマイナス点を挙げて「卒業していい」と提言した。

 「ここに書いてあるのは全部、自分を苦しめない方法なんですね。みんな百点を目指し、ちょっとミスをすると自分の力にマイナスがあると捉える『引き算思考』をしてしまう。進歩主義や生産性至上主義といった近代精神に、いかに縛られているか」

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◆「愚痴をこぼしていい」 我慢すればストレス

 「愚痴をこぼしていい」「悪口を封殺しなくていい」と書いた部分にも反響が多かったという。「子どものころから『いけない』と習いますけどそれも抑圧で、我慢すればストレスになる。そうしたい側面はみんな持っているのですから」。連載中も、愚痴を取り上げた回は東京MXテレビ「5時に夢中!」で取り上げられ、マツコ・デラックスさんが「愚痴ってすごい大事だなって思う」とコメントして話題になった。

 「たかが自分、されど自分」と自分に言い聞かせる手法や、ヴェルディのオペラ「ファルスタッフ」主人公の「世の中全部冗談だ 人間すべて道化師」という言葉を紹介するなどして、自己を見つめる際のバランスの取り方も助言。「高齢になると幸せの尺度は愛情になる」と、家族や友人知人だけでなくペットやタレント、本や音楽などに愛情を注いで生きる幸せについてもつづった。「愛されるには境遇が必要だけど、愛するのは一人で済むし、いくらでも材料は転がっていますから」

 中高年の男女を中心に「これからは楽に生きていけそうです」といった感想が出版社に届いている。「若い人でも『しなければならない』にがんじがらめになっている人が読んでちょっと視点をずらし、楽に生きていいんだと思ってくれるとうれしい」

 

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