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【東京エンタメ堂書店】

「脱真実の時代」 情報を読み解く力を磨く

 インターネットの発達で、誰もが情報発信できる時代。誹謗(ひぼう)中傷やデマを流すことは容易で拡散のスピードも速く、社会を動かすこともあります。米国では、大統領選もネットの偽情報に左右されました。規制の動きもありますが、表現の自由の問題もあって進んではいません。情報を読み解く力を磨くには−? 中間選挙があったばかりの米国の実態が分かり、日本でも参考になる三冊を紹介します。 (放送芸能部長・鈴木伸幸)

◆米国左右した偽ニュース

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 米国で「主流派」と呼ばれるCNNテレビやニューヨーク・タイムズ紙を、「フェイクニュース(偽ニュース)」と攻撃して物議を醸す共和党のトランプ米大統領。彼が当選した二〇一六年の大統領選は、ネット上に流れた大量の偽ニュースに影響されたといわれています。それを明らかにしているのが、<1>平和博著『信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体』(朝日新書、八二一円)です。

 典型例が「児童性愛の組織がワシントン近郊の食堂を拠点に活動。民主党のクリントン氏が関与している」という偽ニュース。二人の子どもを持つ二十八歳男性がそれを信じ、食堂に乗り込んで自動小銃を発砲するという事件もありました。

 「民主党のオバマ前大統領はケニア生まれ」「ローマ法王がトランプ氏支持」といった偽ニュースもありました。否定されても、いまだに信じている人がいます。それらの発信源は米国内に限りません。過激な偽ニュースでアクセス数を上げ、広告で稼いだ多くの人たちが、東欧のマケドニアにいたことも分かっています。

◆「いいね!」の落とし穴

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 ネットは、日常生活に欠かせなくなっていますが、実は私たちが会員制交流サイト(SNS)で安易にクリックしがちな「いいね!」ボタンには危険性があります。英ケンブリッジ大の研究員によると、ある個人が残した「いいね!」の記録を六十八個分析すると、その人の大体のプロフィルが分かるそうです。

 それを活用して特定層を狙った広告が大統領選に影響したことを、<2>福田直子著『デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義』(集英社新書、七九九円)は指摘します。

 例えば、移民の増加を懸念する有権者が多い地域に限定して「クリントン政権が誕生すれば、移民が急増する」という偽ニュースを流す方法です。人工知能(AI)の発達で、ビッグ(大量)データの解析は容易になっています。ネットにはこんな落とし穴もあるのです。

◆だまされないためには

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 それでは、だまされないためには、どうすればいいのか。大学生と話し合いながら、子どもにも分かりやすい言葉で書かれた<3>下村健一著『窓をひろげて考えよう』(かもがわ出版、三〇二四円)が好評です。情報に対し、違う立場からも考えてみる、情報源を変えてみる、見えていない部分を想像してみる−といった基本姿勢の徹底です。「ポストトゥルース(脱真実)の時代」といわれる今こそ、私たちの真実を見分ける力が問われています。

 

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