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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>本の中の「図書館」へ行こう

 「健康寿命を延ばすには、運動よりも食事よりも読書が大事。図書館に通うとさらに良い。」という驚きの答えを、人工知能(AI)が弾(はじ)き出したそうです。あるテレビ番組での報告です。いいことずくめの読書と図書館! そこで、今回のテーマは「図書館」です。

 出版業界でも話題になったテレビ番組。「さまざまなジャンルの本から知的な刺激を受けるとボケや物忘れ防止になる。また、図書館までの移動や読みたい本を探して館内を歩き回ることで、いい運動になる」とのことでした。

 十代のうちから図書館に通う習慣を身につければ老後も安心!? さあ、まずは、本の図書館へ出かけてみましょう。  

◆仕掛け、あちこちに

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 <1>乙一(おついち)『箱庭図書館』(集英社文庫、六四八円)

 六つの短編は主人公もテイストも違いますが、舞台はすべて同じ「物語を紡ぐ町」というキャッチコピーの文善寺町という町です。そして市立図書館と、そこに勤める女性がたびたび出てきます。

 また、ある短編で、誰かが鍵を拾う。すると、別の短編では、誰かが鍵を落とす。などなど、ちょっとした仕掛けがあちこちに盛り込まれていて、通して読むとさらに楽しめる一冊になっています。

 また、この本は、読者投稿のボツ原稿を乙一さんがリメイクしたとのことですが、巧妙な設定と独特の語り口は、他の乙一作品と比べても全く遜色なし。ミステリーあり、ホラーあり、コメディーやファンタジーあり。部活や恋、友情や家族なども描かれバラエティー豊か。きっと、あなたも好きな一編が見つかるはず。

◆「大人の薦める本」は書かない

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 <2>辻村深月(みづき)『図書室で暮らしたい』(講談社、一六二〇円)

 『かがみの孤城(こじょう)』で今年の本屋大賞を受賞し、十代にも人気の辻村さんのエッセイ集。

 好きな小説や漫画やアニメ、映画、ドラマ、そして自作についてなど、「物語」にまつわるエッセイもたくさん。

 高校生の頃、好きな作家さんにファンレターを百通! 送って心配になり、「私はストーカーではありません」と また手紙を送ったら、なんとお返事がきたという話。

 直木賞を受賞した際に、集英社の担当さんから「お祝いに欲しいもの」を尋ねられ『ジョジョの奇妙な冒険』を全巻もらった話など、つい笑ってしまいました。

 また<小説を書く時にいつも思うことがある、それは「大人が薦める本にならなければいいな」ということだ。>という文章ではじまる「大人の薦める本」というエッセイには、大きく頷(うなず)きました。わたしもその気持ちを忘れずに、この連載の原稿を書きたいです。

◆10歳が親介護 現実に

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 <3>ジョー・コットリル『レモンの図書室』(小学館、一六二〇円)

 パパと二人で暮らしている十歳の少女、カリプソは本を読むのが大好き。家に小さな図書室があって、ずっとひとりでもいいと思っています。

 ところが、本をきっかけに転校生のメイと仲良くなります。そして、二人で感想を言い合い、本を薦めあう楽しさを知ります。そして、二人で小説を書き始め、ネットに公開するのですが……。

 一方、パパはママが亡くなったショックから精神的に不安定になり、家事を放棄。カリプソは食事もままなりません。このように、病気や障害がある家族を子どもが面倒みる「ヤングケアラー(若い介護者)」は、近年、日本でも増えているそう。超高齢化で核家族が増えた今、他人事(ひとごと)ではないと、考えさせられます。

 最後はカリプソの書いた小説で、パパの絡まった心の糸がゆるみます。文章の力、本を読むことは、やはり心と体に効くようです。

  *毎月第四月曜掲載。

 

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