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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>和の文化を知ろう

 初詣、門松、鏡餅、おせち料理など、一月は日本の伝統に触れることの多い月。さあ、そこで、和の文化をもっと知ってみませんか? お菓子やお茶や日本家屋。日本人が古くから大切にしてきた感性は、知れば知るほど奥が深い!

◆「用の美」味わって

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 <1>福田里香『民芸お菓子』(ディスカバー・ジャパン、二三七六円)

 まずは、身近なお菓子から日本の「民藝(みんげい)」を見つけましょう。民藝とは、民衆的工芸のことで、大正時代、暮らしの中で使われてきたかごや器などの日用品に「用の美」を見いだす「民藝運動」が起こりました。この本は、その民藝運動にゆかりのある日本全国のお菓子が八十八点も紹介されています。

 例えば、岩手県盛岡市の光原社のくるみクッキー。ここは宮沢賢治の生前唯一の童話集『注文の多い料理店』を発刊した店で、店名は賢治の命名です。包装紙は九十代の今も現役で活躍する染色家、柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)さんの手によるもの。

 また、版画の巨匠、棟方志功は大の甘党で、自分が気に入った全国各地のお菓子のパッケージをたくさん手がけています。他にも人間国宝の染色家、芹沢〓介(けいすけ)や、柳宗理などの包装紙や箱も紹介されていて、どれも眼福です。

 いつも、なにげなく食べているお菓子のデザインやパッケージを、じっくり眺めてみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

◆決まりごとの向こう

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 <2>森下典子『日々是好日(にちにちこれこうじつ)』(新潮文庫、五九四円)

 日本のお稽古事なんて、古くさくてカッコ悪い。茶道って、「シャカシャカ」と泡を立て、なぜかお茶碗(ちゃわん)を回して飲むんでしょ? そう思っていた著者が茶道を習いに行くことに。

 お茶室に入るときは、左足から。お湯はお茶碗の前から注ぐ。たくさんの決まり事を、とにかく繰り返す日々。ところが、十数年後、梅雨のある日、茶室でハッとします。

 <手順を間違えてはならないという緊張も(中略)、帰ったらしなければいけない用事も、何もなかった。自分はもっと頑張らなければダメだという思いも、他人から好かれ評価されなければ自分は無価値なのではないかという不安も、人に弱みを見られたくないという恐怖も消えていた。(中略)私はただ、いるということだけで百パーセントを満たしていた。>

 茶道という、がんじがらめの決まりごとの向こうにある自由。夏には暑さを、冬には寒さを、今、この瞬間を五感で味わうという茶道の極意に、著者が気づくシーンは感動的。昨年、映画化もされました。

◆日本家屋に住みたい

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 <3>山下和美『数寄(すき)です!』(集英社文庫、全三巻、第一巻六四八円)

 あなたの家に畳の部屋はありますか? 障子は? ふすまは? 床の間は? そもそも数寄屋(すきや)って、なに? その答えは、この本を読むとわかります。

 人気漫画家の山下和美さんが、日本家屋を建てるまでのコミックエッセー。土地探しや木材などの素材を選ぶところから、段階を踏んで、細かに描いてあり、わたしも初めて知ることばかり。

 時間をかけて乾燥した木材は何百年も持つ。瓦は下の建物がしっかりしていれば落ちることはなく、むしろ台風に強いとか。なるほど、現存する世界最古の木造建築物、法隆寺が千年以上も健在なのは、そういう理由だったんですね。 

 紆余(うよ)曲折しながら進む家づくり。ところが、建築最中に、あの東日本大震災が起こってしまう――。そして、ついにこだわりの家が完成!

 読み終えた時は、あなたもきっと数奇屋に住んでみたくなりますよ。

 *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。『わたしを決めつけないで』(講談社YA!アンソロジー)発売中。

※〓は金へんに圭

 

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