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【東京エンタメ堂書店】

「カーサ ブルータス」編集長 「ル・コルビュジエ」を知る3冊

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 「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ−ピュリスムの時代」が、19日から国立西洋美術館(東京・上野)で始まる。記念に「ル・コルビュジエと世界遺産」を3月号で特集中の月刊『カーサ ブルータス』=写真=の西尾洋一編集長に、ル・コルビュジエをより深く知るための3冊を挙げてもらった。

◆「元祖闘う建築家」を解説

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 <1>安藤忠雄著『ル・コルビュジエの勇気ある住宅』(新潮社、1512円)

 ル・コルビュジエを知るための入門書として最もオススメしたいのが、国民的建築家・安藤忠雄さんによる本書。安藤さんは20歳のときに古本屋で見つけた『ル・コルビュジエ全作品集』に衝撃を受け、24歳のときに何のつてもないままヨーロッパに渡り、ル・コルビュジエ設計事務所を訪ねました。残念ながら当人はその1カ月前に他界したため対面はかないませんでしたが、フランス国内の作品はくまなく見て歩いたそう。

 そんな自身の建築体験や建築作品を元に、巨匠の代表作と建築理論やエッセンスをわかりやすく解説。初期の建築では「ドミノ・システム」、サヴォワ邸では「近代建築の五原則」「住宅は住むための機械である」、マルセイユのユニテ・ダビタシオンでは「シトロアン住宅」「ブリーズ・ソレイユ」、カップ・マルタンの休暇小屋では「モデュロール」等々。“闘う建築家”安藤忠雄が元祖“闘う建築家”と称するのがル・コルビュジエ。だからこそ、思わず熱が入ってしまうのだそうです。

◆寸法のない図面…弟子たちは

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 <2>松隈洋(まつくまひろし)著『ル・コルビュジエから遠く離れて』(みすず書房、3888円)

 今年、開館60周年を迎えた国立西洋美術館は、2016年に世界遺産に登録された「ル・コルビュジエの建築作品」のひとつであり、日本で唯一の建築作品。ただし、巨匠がフランスから送ってきた図面には寸法が書かれておらず、それを必死で解読して設計・施工したのは、前川國男、坂倉準三、吉阪隆正という3人の弟子たちだった――。

 著者の松隈洋さんは、日本の近代建築の再評価と保存活動に取り組むDOCOMOMO Japan(ドコモモジャパン)の代表であり、本書では3人の弟子たちの建築作品をはじめとした日本のモダニズム建築が生まれた歴史的背景や設計プロセスを丁寧に掘り起こしていきます。

 ハイライトはやはり1955年に国立西洋美術館設計のために来日したル・コルビュジエの滞在記。敷地である上野公園に足しげく通い、飛行機から初めて見た富士山にいたく感動し、京都では桂離宮よりも先斗町(ぽんとちょう)の路地空間に興味を示す。ル・コルビュジエが日本の近代建築に与えた影響と足跡を深く知ることができる良書です。

◆「1人メディア」100年も前に

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 <3>ル・コルビュジエ著、白石哲雄監訳『輝ける都市』(河出書房新社、1万800円=大型本)

 建築のほかに著作も多いル・コルビュジエ。2016年にはある1冊がついに邦訳されたことが話題となりました。それは1935年に初めて出版した都市論『輝ける都市』。人口の過密で環境が悪化した近代都市を批判し、解決策として建物を高層化し、足元の空いたスペースには公園を造り、自動車道を整備すれば、太陽や緑の恵みに溢(あふ)れた健康的な生活を享受できる。その主張は当時はほとんど受け入れられませんでしたが、後世に大きな影響を与えました。六本木ヒルズ誕生の原点にもなったのは有名な話ですね。

 ただ、本書で最も特筆すべきは、巨匠自ら文章を書き、写真や図版を選んでコラージュし、デザインしていったページを忠実に再現しているところ。そして「天才が必要なら私がお引き受けしよう!」「人々を4階以上まで階段で上がらせるのは犯罪的である」等、今なら炎上必至の扇情的なフレーズを連発し、自身の建築理論を世界に発進していく。その姿勢は現代のSNS(会員制交流サイト)等に見られる“1人メディア”を100年も早く先取りしていました。

 

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