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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>ネットに疲れたら…ユーモアと寛容を

 誰かが、なにげなく発した一言でツイッターが炎上したり、不祥事が起こると一斉に袋叩(ふくろだた)きにされるインターネット社会。こういう時代だからこそ、ユーモアと寛容は人間の美徳だとつくづく思います。息苦しいなと思ったら、少しスマホから離れて、本で笑ってみませんか? 今回は笑える本を紹介します。

◆大先生の「全力バカ」にグッと

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 <1>佐藤愛子『孫と私のケッタイな年賀状』(文春文庫、九一八円)

 先日、本屋さんで見つけて、店先で爆笑してしまった本。佐藤家の年賀状は毎年、佐藤先生とお孫さんが仮装してツーショットで撮影する。その二十年の記録がここに。

 トトロ、泥棒、晒(さら)し首、どじょうすくい、メイドカフェ、大根踊り。撮影は、どんどん過激になり、ついには、正月のめでたさを吹き飛ばす「お葬式の死体」まで演じてしまう佐藤先生。そしてそれに応えて、成人してもハゲのかつらをかぶり、小坊主を演じるお孫さんもエライ!

 真面目くさった年賀状を書くのは億劫(おっくう)だから写真を送れば楽でいいと思った結果、書くよりも何倍もメンドくさいことになったと語る佐藤先生。人生の大先輩が、それくらい全力でバカをやっている姿にグッときます。そして、スティーブ・ジョブズの「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」が頭を過(よ)ぎって行きました……。 

◆元気が出る 秀逸ギャグ

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 <2>松本ひで吉『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』(講談社、既刊二巻、第(1)巻九一八円)

 落ちこむ事があった日に、この漫画を読んだらつい笑ってしまい、読み終えた時には、なぜか元気になっていました。ギャグ漫画ってすごい。笑いってすごい。薬より健康に効くかも。

 天真爛漫(らんまん)で甘え上手で天使のような犬。強面(こわおもて)で魔王のような邪悪さを持つツンデレ猫。その二匹と暮らす漫画家のごくごく普通で、だけどユカイな日常が描かれます。

 ツイッター発で人気になり書籍化した漫画は数あれど、中でもこの本は犬と猫の対比が面白く、ギャグのセンスも秀逸。動物たちへの愛もたくさん詰まっていて、猫派の人にも犬派の人にもお薦めです。

◆本音バシバシつぶやいちゃうよ

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 <3>橋本治・文、田中靖夫・絵『絵本徒然草』(河出文庫、(上)(下)巻とも八一〇円)

 作家の橋本治さんが亡くなってしまいました。わたしも含めて、悲しくて笑えないよ!という方も多いでしょうが、橋本さんの本を読んだことがないという十代の皆さんに、そのおもしろさを知っていただきたく、追悼の意を込めて、ここで一冊紹介させてください。

 この本は、『徒然草』を現代語に訳し、膨大な注釈を付けたものです。例えば、冒頭のあの有名な「つれづれなるままに日くらし硯(すずり)にむかひて――」を橋本さんが現代語に訳すと<退屈で退屈でしょーがないから一日中硯に向かって、心に浮かんで来るどーでもいいことをタラタラと書きつけてると、ワケ分かんない内にアブナクなってくんのなッ!>となります。

 そして、アブナクなった吉田兼好は、本音をバシバシつぶやいていきます。<一つ事を絶対にやりとげようと思うんならば、他の事がダメになるのも嘆くんじゃないの。人にバカにされるのも気にすんじゃないの。>

 読んでいるうちに、古典が前よりも身近になるし、受験勉強だって楽しくなります。

 橋本さんは、他にもたくさんの本を書かれています。古典に関する本だけではなく、小説、人生相談、漫画や映画評論、美術史、恋愛論など著作は多岐にわたります。ぜひ他の本も読んでみてください!

  *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。絵本『ちびしろくまのねがいごと』(絵・庄野ナホコ、講談社)発売中。

 

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