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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>家族が「認知症」になったら

 家族が認知症になり、介護が必要になったらどうすればいい? 誰もが避けて通れない「老いる」ということ。今回は、重くなりがちな認知症や介護の問題をユーモアやミステリーを交え、時に軽やかに、読みやすく描いた3冊を。

◆どんな病気 知ることで

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 <1>緒川さよ『おばあちゃん、わたしを忘れてもいいよ』(朝日学生新聞社、1296円)

 「着物姿でかっこよくて、わたしの自慢だったおばあちゃんはどこへ行っちゃったの?」 

 主人公の辰子は、両親と認知症になったおばあちゃんと4人で暮らす小学5年生。認知症の影響で自分のことを忘れ、「あんたは誰?」と、何度も名前を聞くおばあちゃんに、寂しさといらだちをつのらせていきます。

 「辰年生まれだから辰子。おばあちゃんがつけた古くさい名前のせいで、クラスでもからかわれているのに。わたしの名前を忘れないで!」

 働く両親の代わりに、いつも面倒を見てくれた大好きなおばあちゃんが、知らない人になっていく。そんなある日、辰子は昔のおばあちゃんに戻る魔法の呪文を発見しますが、物語が進むにつれて、辰子は、認知症という病気について知り、現実を受け入れます。

 さらに、自分の名前に込められたおばあちゃんの思いや愛情を知り、自分の名前を初めて好きになります。そして「おばあちゃん、わたしを忘れてもいいよ」と口にします。それが、本のタイトルに。第9回朝日学生新聞社児童文学賞受賞作。

◆深刻だけど ユーモアも

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 <2>ニコ・ニコルソン『わたしのお婆(ばあ)ちゃん 認知症の祖母との暮らし』(講談社、700円)

 「お母さんと一緒に死のうかと思って」

 東日本大震災。津波で家が流された母と婆(ばば)。なんとか一命は取り留めたものの、避難生活や仮設住宅暮らしで、みるみる元気が無くなり、無気力になっていく婆。

 「元の場所に帰りたい!」

 その希望を叶(かな)えるため、流された実家と同じ場所に家を建て直した母。完成した新しい家で、やっと生活をやり直せる。そんな希望を胸に実家に帰省した漫画家の主人公は、冒頭の母の言葉と婆の奇行にショックを受ける。そして、実家で母と一緒に婆を介護しようと決心するが、それは想像以上に大変で……。

 認知症とは一体どのような病気なのか? どんな風に向き合っていけばいいのか? 何も知らなかった主人公が、婆と過ごすことで気づいたことを描いたエッセイ漫画です。

 認知症に震災というかなり深刻なテーマですが、ギャグも交えながら、温かい気持ちで読めます。震災の起こった3月に読み返したい本です。

◆母娘の軋轢 最後はホロリ

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 <3>篠田節子『長女たち』(新潮文庫、724円)

 短編集。1話目の「家守(いえもり)娘」の主人公は43歳の女性。認知症の母親の介護のために、20年以上勤めた会社を辞めます。10代にとっては親世代の主人公ですが、「介護離職」が増えている現実や、介護の大変さを疑似体験してほしい。

 センスが良くて、料理上手。絶対的な存在だった母親の老い。物忘れに物取られ妄想。幻覚を見るようになり、そこにいない孫娘に話しかけ始める。その恐ろしさ。

 母と娘の間に様々な軋轢(あつれき)が生じ、精神的に追い詰められていく主人公。そして、ついには、母親が放火までしてしまうシーンには戦慄(せんりつ)。ところが、その焼けた家から過去の白骨化した死体が出てきて……とミステリー要素もあって、最後まで、ぐいぐい読んでしまいます。最後、母に見えていた幻の少女の正体を知ってホロリ。

 *毎月第4月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家。絵本『ちびしろくまのねがいごと』(絵・庄野ナホコ、講談社)発売中。

 

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