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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>読んで詠んで! 日本の詩歌

 新元号「令和」の出典となった歌集『万葉集』が売れているそう。また、芸能人の俳句を添削するテレビ番組も人気です。あなたも和歌や俳句に触れてみませんか? そして、新しい時代を詠んでみませんか? 

◆時代を超える五七調

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 <1>大岡信編『星の林に月の船』(岩波少年文庫、七一三円)

 『折々のうた』などで知られる詩人の大岡信さんが、和歌や俳句などの詩歌の中から、小・中学生に向けて、百九十四作を選び編んだ本です。

 タイトルは、『万葉集』の柿本人麻呂作「天(あめ)の海に雲の波立ち月の船星の林に漕(こ)ぎ隠(かく)る見ゆ」から。夜空を海に見立て、降るような星の林の中を月の船が渡るという、現代にも通じる幻想的な歌です。

 そんな千数百年前の『万葉集』から始まり、最後の寺山修司まで、時代の流れに沿って詩歌が配列してあります。

 「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」(松尾芭蕉)。「梅一輪一りんほどのあたゝ(た)かさ」(服部嵐雪(らんせつ))。「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」(正岡子規)など、誰もが一度は耳にしたことのある有名な俳句もたくさん選んであり、大岡さんのその繊細な解説で、より深く味わえるようになっています。

 また、五七調のリズムや言葉の響きは、時代を超えて日本人に受け継がれてきたということがよくわかります。

◆驚くの うまい人

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 <2>堀本裕樹著『俳句の図書室』(角川文庫、六九一円)

 こちらは、俳人の堀本裕樹さんが、正岡子規以降の近代から現代の俳句を中心に、百十四句を選んだアンソロジー。

 俳句は世界で一番短い詩。けれども、たった十七音で、宇宙も詠めるし微小な事も詠める。そして、古風で風雅に見える俳句ばかりが俳句ではありません。この本を読むと、身近に感じられる面白い、今の時代の俳句が、たくさんあることがわかります。

 「てのひらに落花(らっか)とまらぬ月夜かな」(渡辺水巴(すいは))。「筍(たけのこ)や雨粒ひとつふたつ百」(藤田湘子(しょうし))。「しんしんと寒さがたのし歩みゆく」(星野立子(たつこ))

 また、「ずぶぬれて犬ころ」(住宅顕信(すみたくけんしん))のように、たった九音の自由律俳句もあります。自由律俳句とは、定型や季語に縛られずに作る俳句のこと。種田山頭火や尾崎放哉(ほうさい)などが有名ですが、むきだしの言葉をたたきつけられるような、ハッとする魅力があります。

 「あとがき」の対談で又吉直樹さんが、「俳句を作る人って驚くのがうまいな。僕らが当たり前の風景として素通りするものを見逃さない」と語っていますが、この本を読むと心からそう思います。

◆お題は「モテる」?!普段の言葉で

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 <3>西加奈子、せきしろ著『ダイオウイカは知らないでしょう』(文春文庫、七四五円)

 直木賞作家の西加奈子さんと文筆家のせきしろさんが、短歌に挑戦! 星野源さんや光浦靖子さんなど、個性的なゲスト達(たち)にお題を出してもらうのですが、そのお題も「メール」「バンド」「きらきら」「痒(かゆ)い」「逃げる」など、どれもユニークです。

 たとえば、「モテる」というお題では、「こういう時泣かない方がモテるのかそれとも逆か5秒で答えて」と詠むせきしろさん。また「ダイオウイカ」というお題では、「あの方が覚悟を決めた瞬間をダイオウイカは知らないでしょう」と西さんが詠み、それが本の題名に。初心者でも難しく考えず、普段の言葉で、楽しみながら自由に短歌を詠んでいいんだなと思わせてくれる本です。

 最後に、わたしがこの本で一番好きな短歌を紹介します。せきしろさん作「夢の中の弟は幼いまま 雪が降っても 雪が降っても」です。

 *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 『作家になりたい!(5)』(講談社青い鳥文庫)発売中。

 

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