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【東京エンタメ堂書店】

五輪の「そもそも」を知る3冊

 来年に迫る、2020年東京オリンピック・パラリンピック。冷静な視線を向けつつも、ちょっとソワソワ。そんなあなたにオススメする、「そもそも五輪って?」が分かる3冊です。 (文化部・出田阿生)

◆「女性だけ…」どう思う?

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 <1>坂上康博編著『12の問いから始める オリンピック・パラリンピック研究』(かもがわ出版、3240円)は、未来を担う子どもに考えてもらおうという本。理念や歴史、スポーツとナショナリズムの関係、ジェンダー、お金の問題…。11人の研究者がそれぞれのテーマで「あなたはどう思う?」と問い掛ける。

 近代オリンピックの創始者クーベルタンは、平和な社会を目指す「オリンピズム」の理念を唱えた。「Q1」の章では「異なる国の人々の存在を知って理解し、尊重しあう関係をつくる」というオリンピックの「基本のキ」が分かる。

 とはいえ、そのクーベルタン氏は「女性が出場することは何かの間違い」という考えの持ち主でもあった。女性選手が活躍する現在でも、新たな課題がある。2016年リオ五輪陸上女子800メートルで金メダルのセメンヤ選手が「男性ではないか」と検査を受けたと報じられたこともあったが、「Q8」の章では「なぜ女性にだけ性別確認検査があるの?」「性別は男女の二つだけ?」と投げかける。小学校高学年からが対象だが、大人も読み応えがある。

◆経済効果…やっぱりか

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 被災地復興さえ後回しにするのは、雇用創出や経済効果が見込めるから−。そんな招致の宣伝文句にマユツバのあなたには、<2>A・ジンバリスト著、田端優訳『オリンピック経済幻想論』(ブックマン社、1728円)を。著者はスポーツビジネスに精通する米国の経済学者。統計や資料に基づいてこれまでの大会を振り返り、「経済的効果はそれほど期待できない」と淡々と語る。やっぱりそうか…。

 確かに、テロ警戒のための膨大なセキュリティー費用を考えても、大会収入で経費をまかなえるとは素人だって思えない。「最大の遺産」は「高額な維持費がかかる使い道のないスタジアムと、返済に10年から30年はかかる巨額の負債」と著者。経済効果がありますよという甘い言葉と裏腹の現実を、豊富な過去の実例でかみしめる。

◆「憲章」読んでるの?

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 冷や水を浴びた気分になったところで、<3>小川勝著『東京オリンピック 「問題」の核心は何か』(集英社新書、756円)を読む。まずは「政府の基本方針」と「オリンピック憲章」が相いれない部分をビシバシ指摘し、矛盾点を明らかにする。たとえば政府方針は、開催意義を「自信を失いかけてきた日本を再興」するためだと記す。何を根拠に日本人が自信喪失していると断じるのか、何への自信なのか不明だ。著者は「日本選手はバブル経済崩壊後の方が活躍しており、スポーツ界の自信喪失でないのは確か」という。また、政府方針は「過去最高の金メダル数を獲得する」と目標設定するが、憲章には「国家間の競争ではない」とある。まともに憲章を読んでるのか、政府関係者よ…。ただ、読後には救いがあった。オリンピックの目指すものを端的に示した最終章は、思わず涙してしまった。

 ちなみに五輪にそれほど関心がないスポーツ音痴が読んでも、3冊とも面白かったことは明記します。

 

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