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【東京エンタメ堂書店】

<小林深雪の10代に贈る本>ショートショートはいかが?

 長編小説を読むのは苦手だけれど、なにか読んでみたい。そんなあなたに、ショートショートはいかがですか? とにかく短くて、すぐに読めます。でも、たった数ページの中に、笑いや驚きや感動がたくさん詰まっていますよ。

◆SFだけど身近に

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 <1>星新一『きまぐれロボット』(角川文庫、410円)

 まずは、星新一さん。生涯で1000作以上の作品を発表し、小中学生から大人まで幅広い読者層に愛され続けている「ショートショートの神様」です。この本は、博士たちの発明や発見が、次々と騒動を巻き起こしていくSFですが、どれも身近に感じられる作品ばかり。

 たとえば、冒頭の「新発明のマクラ」。博士が眠っている間に英語が話せるようになる枕を完成させます。「勉強はめんどうだが、英語がうまくなりたい」おとなりのご主人が試してみますが、一向に効き目がありません。「おかしいな」と博士が思っていると子どもが「おとうさんがこのごろ、寝言を英語で言うの」。

 半世紀以上前の作品ですが、再読して、どの作品も、古くなっていないことに驚きます。公式サイトによると「ダイヤルを回す」を「電話をする」に直すなど、少しでも長く読み継がれるように、星さん自身が、出版後もずっと改訂作業をされていたとのこと。

 登場人物の名前もエフ博士やアール氏など、時代を感じさせない工夫があちこちにしてあって、凄(すご)みを感じます。

◆童話系でほのぼの

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 <2>山口タオ『白のショートショート ふられ薬』(講談社、1080円)

 星新一ショートショートコンテスト出身の作者が自ら厳選したショートショート集。ほのぼの系の『白』と怖い系の『黒』と2冊出ていますので、お好みでどうぞ。

 表題作の「ふられ薬」は、自分に言い寄ってくる大嫌いな男子に「ふられ薬」を飲ませることに成功した女子が主人公。ところが、薬の作用で価値観が逆転した男子が、自分好みになってしまって…!? というクスッと笑える楽しい作品です。

 また、クリスマスにサンタクロースから電話が来る「よい子の報酬」。「雨の日のお客さま」、鶴ならぬ「タヌキの恩返し」など、長く童話を書いている作者ならではの個性豊かな全24話が収録されています。

 わたしのお気に入りは、犬が突然しゃべりだす「彼女は公園で夢を見た」と、宇宙飛行士が「おれたちは青い宝石みたいな星の上で暮らしているんだよ」とロバに話す「ロバが語った宇宙飛行士の話」です。

◆笑えて、ブラック

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 <3>田丸雅智『おとぎカンパニー』(1512円、光文社)

 今、注目の若手ショートショート作家の田丸雅智さん。

 この本は、「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」「マッチ売りの少女」「ジャックと豆の木」など、誰もが知る「おとぎ話」を、大胆にアレンジした14編が収録されています。

 たとえば、「白雪姫」なら、現代の会社が舞台。秘密の鏡を手に入れた新人OLを主人公にした「同期で一番」。

 「鏡よ鏡、同期で一番仕事ができるのはだあれ?」

 「それはあなたです」

 ところが、そのうち、鏡が「それは白石美雪です」と、別の名前を答えるようになる。

 嫉妬した主人公は、会議の前に睡眠薬入りのアップルティーを飲ませて、失敗させようとするのですが…。

 笑えたり、ブラックだったり、面白い試みの1冊です。

 また、同じ作者による、神社のお祭りを舞台にした和風の『ショートショート千夜一夜』も、おすすめです。

  *次回は30日掲載予定。

<こばやし・みゆき> 『未来を花束にして』(講談社)発売中。

 

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