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【東京エンタメ堂書店】

<ブルボン小林 月刊マンガホニャララ> (5)原作者と漫画家

(左)トミムラコタ・漫画 森もり子・原作『ギャルと恐竜』 *『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載中。既刊2巻。 (右)いがらしゆみこ・漫画 佐藤博之・原作『エレクトラ!』 *『女性自身』(光文社)で連載中。既刊1巻。

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 古い話だが、海老一染之助・染太郎の片方がなにかを放って、もう片方が傘でそれを受け止めながら回転させ「これでギャラはおんなじ!」と嘆くギャグがあったが、実のところギャラはどうだったんだろう。

 漫画は、その作者名の隣に原作者名が併記されることがある。漫画の原作者と作画家は、どうしているだろう。僕が多く聞くケースは、ごくシンプルに原稿料も印税も折半だという。

 ……そう聞くとつい、作画がたくさんもらっていいような気がしないだろうか。文字は誰でも書けるが絵はセンスや技量が必要だからだ。

 漫画家を間近にみていると、「ネーム(漫画の設計図)」で苦しむ人がとても多いので、ギャラが等分なのも分かるが、どこか尊重したいのは作画家、傘を回している方と思っちゃうだろう。その漫画の作者にサインをもらうとしたら、キャラクターを描き添えてほしいもの。

 今日は二つの漫画を紹介するが、どちらも原作つきだ。

 トミムラコタの『ギャルと恐竜』(原作・森もり子)は『オバケのQ太郎』以降の漫画界の定番で、定番すぎて最近は少なくなった「かわいい、変なやつが居候する漫画」の最新型。

 コンビニでバイトするギャルと暮らすようになる恐竜が超かわいい。それこそオバQに似た無垢(むく)さ。千円札の「すかし」に心から驚き、そのお札を山折り谷折りして野口英世をエッチな目にするだけで喜ぶ。

 しかしこの漫画が真に新しいのは恐竜でなくギャルの方! 『オバQ』における正太君の役割のギャルが超々魅力的。普通、居候漫画は片方が個性的で、受け入れる側は中庸な存在に描くほうが、個性的なキャラが引き立つのだが、今作ではギャルの「生態」も恐竜同様に描く。

 ポイントは、ギャルがあまり(我々の思う)ギャルではないということ。これまでの漫画のギャルは「ていうか」を連発してギャハハと笑うものだが、本作のギャルは口数が少ないのが新鮮だ。それでもバイト先の先輩の体調を心配するとき「顔死んでる!!」と直言してみせるなど、居合で一閃(いっせん)みたいな最少の手数でギャルを表して見事。『小悪魔ageha』などのギャル雑誌も休刊した今、恐竜同様の希少種としてのギャルを捉えているのかもしれない。

 『エレクトラ! 〜罪深き聖女たち』は大ベテラン、いがらしゆみこ先生だ(原作・佐藤博之)。芸能界を舞台に描かれる復讐(ふくしゅう)劇だが、それぞれに思惑がありながら友情も手放さない三人の女がとてもいい。

 「世界征服させてあげるわ」などのケレンに満ちた台詞(せりふ)と、枕投げしてはしゃぐ無垢な笑顔の両立。ドロドロの人間関係を少しも胃もたれさせずに読ませる。現実世界の女性の睫毛(まつげ)の盛り方が往年の少女漫画に追いついたので絵柄もしっくりきている。

 二作とも「原作」「作画」ではなく「原作」「漫画」と記名されている。いわゆるコミカライズではないことを示しているのだが、作画側もアイデアを出して有機的に作り上げているということでもあるだろう。

 どこまでがどっちの手柄というのは、外側から分からない。だが二作ともノリノリで創作されていることは強く伝わってくる。二作とも、サインは二人の作者からもらいたい。(ぶるぼん・こばやし=コラムニスト)

ギャル、恐竜、パンダ。すべて希少種=『ギャルと恐竜』第2巻から

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