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【東京エンタメ堂書店】

麗子の娘 岸田夏子さん寄稿 「劉生」を知る3冊

 「没後90年記念 岸田劉生(りゅうせい)展」(東京新聞など主催)が20日まで、東京都千代田区の東京ステーションギャラリーで開かれている。劉生の孫で、「麗子像」のモデルとなった麗子の娘である、画家の岸田夏子氏に劉生の魅力を知る手掛かりとなる3冊を紹介してもらった。

◆「知りたい人は読まねばならない」 

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 <1>岸田麗子著『父 岸田劉生』(中央公論新社)

 劉生は一八九一(明治二十四)年に生まれ大正を経て一九二九(昭和四)年三十八歳で没しました。近代洋画として初めて「麗子微笑」、「道路と土手と塀(切通之写生)」は重要文化財に指定されています。武者小路実篤の序文の抜粋をご紹介させていただきます。

 「今、麗子さんの書いた父岸田劉生を読み上げた。(中略)岸田の画業の中でも麗子像の占める位置は高い。その麗子自身が父の事をかいたのだから、僕達は期待すると同時に、一種の心配もないわけではなかった。(中略)読み出したら引き込まれて後半は一気に読み、劉生の事を思い出し、なつかしい気持をしみじみと味わゝされた。(中略)劉生の事を知りたい人は是非この本を読まねばならない本だ。この本を読まずに劉生の事を知ろうとする人は、劉生の画業を麗子像をぬかして話そうとする人に似ていると言いたい。(後略)」

◆日常、交友、制作 文字の動画のよう

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 <2>岸田劉生著、酒井忠康編『摘録劉生日記』(岩波書店)

 日本の日記の中で十指に入るという『摘録劉生日記』。日常から交友、制作が生き生き書かれ、まさに文字の動画のような日記からの摘録。文才にも恵まれた劉生の画論、評論、随筆、趣味など、膨大な量の文章を、身近な本としてコンパクトにまとめた本もお薦めしたいと思います。

 編者は現在世田谷美術館館長、二〇一四年に「岸田吟香・劉生・麗子 知られざる精神の系譜」展を同館で開催。酒井氏と美術の関わりは古く、日本初の公立近代美術館である神奈川県立近代美術館の名物館長土方定一のもとで若くして学芸員を務めた後館長に就任。館長時代開館五十周年記念として「生誕110年 岸田劉生展」を開催。師であり、最も早く劉生を評価し、その後劉生研究家のよりどころとなる『岸田劉生』(アトリヱ社)を著した土方定一の跡を継ぐ。

◆ヨーロッパ人の目で進む研究

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 <3>ミカエル・リュケン著『増補改訂版 20世紀の日本美術』(南明日香訳、三好企画)

 私の手元にフランス語で書かれた美しい装丁の書籍が届いた。本場ヨーロッパ人の目でとらえ、劉生をあらゆる面から徹底的に研究し分析、評価を与えた、約二百ページの秀逸の一冊。著者のミカエル・リュケン氏は早稲田大学にも留学し日本通。その後パリ、日本とで数回お目にかかり、パリでの劉生展の意義へと話が進展。同氏は「劉生は近代日本を代表する画家であり、麗子像は、レンブラントの『自画像』、葛飾北斎の『富嶽図』、セザンヌの『サント・ヴィクトワール山』と並べて優れた価値のあるシリーズ」と評価する。

 村上隆、奈良美智をはじめ国際的に知られる日本人アーティストに影響を与え、西洋美術を自由に取り入れた劉生はポストコロニアル時代の先駆者。同氏の『20世紀の日本美術』は劉生にもふれた日本語で読める良書。私の元にはドイツの研究者からも連絡をいただいたりと、ヨーロッパでの劉生研究が進んでいます。みなさまぜひご覧いただき劉生絵画の神髄に触れてくださいませ。

 

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