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【書く人】

日本が誇れる伝統文化 『石倉昇の囲碁入門』 囲碁棋士・石倉昇さん(64)

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 今春、史上最年少の十歳零カ月でプロ棋士となった仲邑菫(なかむらすみれ)さんの登場で一躍、活気づいた感のある日本の囲碁界。囲碁に関心を持ち始めた人も少なくないだろう。こうした中、絶妙のタイミングで世に出たのが本書。九段の現役棋士である著者は「大学で長い間続けてきた囲碁講座の集大成としてまとめた。単なる技術的な入門書ではなく、日本が育てた伝統文化であることを知ってもらうのも大きな狙い」と明かす。

 東大卒業後、大手銀行に就職しながら二年で退職してプロ棋士に転じた異色の経歴を持つ。明快な語り口と解説でアマチュア指導の第一人者として知られ、二〇〇五年から東大の一、二年生を対象に講座を開催。〇八年に客員教授に就任した。東大においても指導の基本は「教えすぎず、やさしいことを徹底的に繰り返す」。専門用語を使うこともできるだけ避けているという。「囲碁は覚えるのと同様、教えるのも難しいと思われている。教え方に悩んでいる人や、これから教えようとしている人にも、教本として活用してもらえればうれしい」

 「琴棋書画(きんきしょが)」という言葉が示す通り、囲碁(棋)は教養人の趣味として古くからたしなまれてきた。「源氏物語」や「枕草子」には関連する記述が随所に登場。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康らの武将も愛好したとされる。「講座で歴史の話をすると、とても親しみを感じてもらえる」という。また、「駄目」「結局」「布石(ふせき)」など囲碁由来の日常用語や、碁盤が使われる皇室行事など興味深い事項も数多く盛り込まれ、楽しみながら囲碁史も学べる。

 囲碁は考える力や大局観、バランス感覚を養うといった教育面での効用も大きいとされ、今や世界で約百五十カ国の人が楽しむ国際競技となった。欧米では特に理数系の大学生に人気が高く、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏も愛好者として知られる。「日本の伝統文化である囲碁を知っていれば、コミュニケーションやビジネスの道具としても役立つ」と強調する。

 高齢化の進展などで競技人口が低迷している日本の囲碁界。「福原愛さんの登場で卓球へのイメージががらっと変わったように、天才少女・菫ちゃんを生んだ今が変革の好機。囲碁の伝道師として、新たな試みにも挑んでいきたい」と意欲を示した。

 日本棋院・一四〇四円。 (安田信博)

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