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【書評】

戦国の城の一生 つくる・壊す・蘇(よみがえ)る 竹井英文著

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◆気鋭の城郭研究家が探る

[評]伊東潤(作家)

 「生々流転(しょうじょうるてん)」という言葉がある。万物は生まれては変化し移り変わっていく、という意味だ。生き物にも「生々流転」があれば、人の手になる建造物にもある。とくに城のように特定の目的を持って造られるものは、その目的が達せられる、ないしは目的が消滅した時、あっさりと死(廃城)を迎えることになる。

 本書は、気鋭の城郭研究家による城の一生を描いた本だ。すべての論拠は文献史料と地道な実地検証から成り、様々な角度から城の一生を探ろうとしている。

 中世城郭ファンの間では、十年以上前から「凄(すご)い若手がいる」という噂(うわさ)があり、その名を私も記憶していた。それが本書の著者の竹井英文氏だ。その竹井氏が、初めて上梓(じょうし)した城本が本書になる。

 本書は、城がいつ何のために造られ、どのように使われ、また維持管理され、何をきっかけとして廃城になり、あるいは再興され、最終的に草生(くさむ)した古城になっていくかを、一次史料を駆使して丹念に探っていく労作である。城郭ファンにとっては、興味の尽きない内容ばかりだろう。築城については、城の位置を決める地選(ちせん)に始まり、築城日数、用材の確保、体制の確立、さらに縄張り術や普請作事(ふしんさくじ)の技術に至るまで多岐に及ぶ。

 維持管理では、城の守備に就いている兵たちへの様々な制約が興味深い。大声を出すな、門限を守れ、酒を飲むな、賭け事をするなといったことを「城掟(しろおきて)」で禁じても、さして効力がないのは、現代にも通じるものがある。廃城と古城については、とくに多くのページを割き、城の終わり方を入念に探っている。さらに築城年代が議論を呼んだ杉山城問題など、昨今注目の話題にも簡単に触れている。

 本書を読んでいくと、城の一生には同じものなど一つとしてなく、それぞれの事情によりライフサイクルが進み、最後を迎えることが分かる。しかし徐々に存在意義を減じていく城もあれば、突然の落城によって終焉(しゅうえん)を迎える城もあり、まさにそこからは、人の一生と何ら変わらぬ「生々流転」を読み取れるだろう。

(吉川弘文館・1836円)

1982年生まれ。東北学院大准教授。著書『織豊政権と東国社会』など。

◆もう1冊 

中井均監修『戦国の名城 50』(宝島社新書)。日本の城の入門ガイド。

 

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