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【書評】

大統領とハリウッド アメリカ政治と映画の百年 村田晃嗣(こうじ)著

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◆政治題材の重厚映画、脈々と

[評]川本三郎(評論家)

 アメリカ映画には大統領を描く映画が数多い。日本映画に首相を描く映画がほとんどないのと対照的。

 アメリカには政治について自由に語る文化風土があるためだろう。

 二大政党制が確立しているのも政治を語りやすくしている原因かもしれない。

 日本では芸能人が政治を語るのはほとんどタブーになっているが、ハリウッドのスターたちは大統領選のたびに誰を支持するか明らかにする。

 だからリベラルか、保守かがはっきりする。ジョージ・クルーニーやウォーレン・ベイティはリベラルだし、クリント・イーストウッドやアーノルド・シュワルツェネガーは保守と分かりやすい。

 ハリウッドでは草創期のグリフィスの「國民の創生」から一昨年のスピルバーグの「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」に至るまで数多くの大統領とその時代を描く映画が作られ続けている。本書はその歴史を丹念に辿(たど)る。

 言われてみて、確かにそうだと気づく。ハリウッドと政治は深く関係し合っている。

 著書は具体的な作品を挙げながら語ってゆくが、驚くのは著者が実に多くの映画を見ていること。

 「スミス都へ行く」や「オール・ザ・キングスメン」のような有名な映画だけではなく日本未公開作品やテレビ映画にも言及する。その詳しさは映画評論家もかなわない。

 細部の充実からハリウッドには確かに「大統領映画」「政治映画」というジャンルが存在していることが分かる。大変な労作。

 ケネディはハリウッドでは英雄として描かれるのが多いのに対しニクソンは悪役。俳優出身のレーガンはまさに大統領を演じきった名優と、各大統領のハリウッドでの役割を色分けするのも面白い。

 大恐慌、第二次世界大戦、赤狩り、ベトナム戦争、9・11、イラク戦争…。時代の節目ごとに、ハリウッドではそれを題材にした重厚な映画が作られ続けている。

 商業主義でありながら志を失わないハリウッドの硬派精神が伝わってくる。

(中公新書・929円)

1964年生まれ。同志社大教授。著書『大統領の挫折』『アメリカ外交』など。

◆もう1冊

村田晃嗣著『銀幕の大統領ロナルド・レーガン』(有斐閣)

 

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